最新記事

動物

動物界一の酒豪、ハムスターの強さは別格

2022年1月12日(水)19時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

写真はイメージ Conny V-iStock

<アルコールを経口摂取した場合、ハムスターの肝臓はエタノールの処理に「非常に効率的」で、血液中にはほとんど含まれないとされる>

世界一の酒豪と聞けば、体躯の良い人物。動物界なら、巨漢のゾウとかサイが思い浮かぶが、実際はそうではない。ゾウは体は大きくても、アルコール代謝の遺伝子を欠いているから酒に弱い。人間はというと、発酵した果物を地面から拾って進化してきた先祖のおかげで、他の生き物に比べるとアルコール耐性はそれなりに強い。本当のチャンピオンは、あなたが予想するよりも貧弱で可愛らしい生き物だ。

先日投稿された英国の医師トム・ロートン氏のツイッターによると、動物界で最も酒に強いのはハムスター。その強さは別格だ。「ハムスターはアルコールが大好きで、水よりもエタノール(アルコール濃度15%)を飲むことを好む。相対的に人間が死に至るような量にも耐えることができる」という。

ロートン氏の投稿は、アラスカ大学アンカレッジの心理学者、グウェン・ルプファーが行った研究を参考にしている。それによると、ハムスターは1日あたり1キロあたり20グラムのアルコールを平気で飲むそうで、これは標準的な男性が1日に21本分のワインを摂取するのに匹敵する。

自然界にもアルコールは存在する。野生では、冬に備えハムスターは巣穴にイネ科の牧草ライグラスの種や果物を蓄えるが、時間が経るにつれ発酵したもので食いつなぐ。ラボでは、ハムスターに水かアルコールを選ばせるとアルコールをとるそうだ。

ルプファー博士の調査によると、経口摂取されたアルコールは腸から肝臓に直接行き、エタノールは分解され始める。ハムスターの肝臓はエタノールの処理に「非常に効率的」で、血液中にはほとんど含まれないとされる。しかし、注射で投与された場合、エタノールは肝臓を迂回して血流をめぐり脳に侵入する可能性がある。ぐらつきを引き起こし転倒する。

ハムスターは酩酊しない

ハムスターがアルコールに強いことは、少なくとも1950年代から知られていた。ラットにアルコールを飲ませるには、遺伝子系統を選択的に交配するか、砂糖とエタノールを混ぜたものの味を覚えるまで慣らす必要があるが、ハムスターの場合は、「ペットショップで買ってきた個体に与えることができる」とフロリダ大学の中毒研究者ダニエル・ガリック氏は言う。

小さな酒豪を酔わせるのに一体どれほどのアルコールが必要かーー2015年にBehavioral Processes誌に発表された論文が一つの答えを示している。酩酊度を、ふらつきがないことを示す0点から転倒して起き上がれない状態の4点まで、スコアで評価した結果、ハムスターは最高濃度でアルコールを経口摂取しても0.5を超えることはなかった。

ハムスターの優れたアルコール耐性はライフスタイルへの適応の結果という見方があるが、前述のルプファー氏は「無糖のエバークリア(ウオツカ)のボトルをケージに置くだけで、ハムスターは大喜びする」と、その酒豪ぶりを話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中