最新記事

アメリカ

今のアメリカに民主主義サミットを開催する資格があったのか(米スレート誌)

REAL LESSON OF THE SUMMIT

2021年12月13日(月)16時05分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
民主主義サミット

サミットは約110の国・地域の首脳とオンラインで結んで開幕したが LEAH MILLIS-REUTERS

<バイデンは民主主義の価値を世界に説く前に米国内の「民主化」を進めるべきだ>

実に奇妙な幕開けだった。12月9日、ジョー・バイデン米大統領は「民主主義サミット」の冒頭、オンラインの公開配信で10分間の演説を行い、言論の自由と開かれた議論の重要性を強調した。

しかしその直後、アントニー・ブリンケン米国務長官が、これから2日間にわたるサミットは非公開で行われると宣言し、配信は打ち切られた。

非公開で行われるサミットは珍しくない。だが今回は、約110の国と地域の首脳がオンラインで参加している。これほど参加者が多ければ、今さら非公開にしたところでメリットはないだろう。

おまけに、これは「民主主義のためのサミット」だ。それがなぜ非公開なのか?

バイデンは昨年の大統領選に勝利する前から、民主主義サミットを開催したいと公言していた。だが今回のサミットには、多くの疑問符が付く。

最も重要なポイントは、今のアメリカに民主主義の実践や価値に関するサミットを開催する十分な資格があるのかということだ。

ピュー・リサーチセンターの10月の世論調査では、民主主義に関してアメリカが「見習うべき模範」であると回答した各国の調査対象者の割合は、中央値でわずか17%だった。

ドイツやオーストラリア、カナダ、韓国、日本といった親密な同盟国では、17%にも届かなかった。

この低評価には、もっともな理由がある。今のアメリカを民主主義陣営のリーダーと呼ぶには、首をかしげざるを得ないことが多すぎるのだ。

例えば、大統領選の行方を決める「選挙人団」という奇妙で非民主的な制度、世論の感覚を共有できていない最高裁、偽情報が飛び交った昨年の大統領選、ドナルド・トランプ前大統領の支持者による連邦議会議事堂の襲撃事件......。

これらは、アメリカが「問題の多い民主国家」であることを示す例のほんの一部でしかない。

今回のサミットには、コンセプト上の問題もある。

バイデンは以前から、今の世界で最も重要な争いは民主主義と専制主義の闘いだと主張し、アメリカが民主主義の価値を率先して世界に示さなくてはならないと言い続けてきた。

この闘いは確かに、国際政治のテーマの1つではある。だがこれを核となる課題と位置付ければ、バイデンは足をすくわれる可能性がある。

諸外国の状況も追い風にはならない。

国際NGOフリーダム・ハウスが先頃発表した調査によれば、世界の人口のうち「自由な国」に住む人の割合は前年の39%から20%未満に低下し、1995年以降で最も低い。

【話題の記事】台湾を見捨て「中国に付いた」ニカラグア...中国の外交圧力は強まっている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中