最新記事
中東情勢

火葬NG、死は門出...移民問題で揺れる今こそ知っておきたい、イスラムの「死生観」

2025年12月17日(水)17時00分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学国際学部教授)
イスラムの王家の墓

イスラム教では土葬が基本だ GreenThumbShots

<イスラム教徒が埋葬方法にこだわるのには、ちゃんとした理由がある>

人はこの世に生まれ、限られた時を歩む。その歩みは永遠の途上にある小さな一章にすぎない。イスラムの視点では、この世は試みと選択の場、死はその終わりではなく、次の世界への門出。魂が肉体を離れ、別の次元へ渡る瞬間なのだ。

死は逃れられぬ法則として定められ、時が来れば誰の前にも静かに訪れる。だからこそ、死を恐怖や拒絶の眼で見るのではなく、安らぎと受容の心で迎える。これこそがイスラムの死生観の根底にあるものだ。


人の身体には、生命の灯が消えた後にも尊厳がある。ゆえに、遺体を損壊することや、弄ぶことは禁じられている。亡骸を丁寧に清め、白布に包み、静かに土へと還す行為は、その尊厳を守る祈りにほかならない。

身体は神からの預かりもの。魂が離れた後も、土の中で守られるべきなのだ。

学者たちは、肉体と魂を区別して考える。肉体は滅びても魂は存続する。死とは、終止符ではなく「状態の変化」。人間は、この世を離れてもバルザハ(死後、来世に向けて通過の世界)を経て、復活と審判へと長い旅路を歩む。

イスラムの遺体の埋葬と弔いは、速やかに行われる。魂の新たな旅を妨げず、敬意をもって次の段階へ送り出すためだ。

亡骸は清められ、布で覆われ、祈りの声に包まれる。これらはただの儀礼ではない。亡き人と、生きる人の心を結ぶ祈りの行いであり、自らもやがてその道を歩むことを想起させる行いだ。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド取得で武力行使を否定 ダ

ワールド

中国との包括的貿易協定の行方不透明─米USTR代表

ワールド

21日開催予定のG7財務相会合、来週に延期=フラン

ワールド

ECB総裁、米商務長官の欧州批判演説を途中退席 ダ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 7
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 8
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    トランプが宇宙人の実在を公表するのは「時間の問題…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 9
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中