最新記事

感染症対策

香港当局のゼロ・コロナ政策がキャセイ航空パイロットの心を蝕む

2021年12月6日(月)10時35分

航空業界では、精神的な問題の兆候があれば再就職が困難になりかねないだけに、極度のストレスは重大な問題だ。

あるパイロットは語る。「少しストレスがあった、と言うことのリスクは何だろう」。パンデミックが始まって以来、香港以外のホテルの部屋に200泊以上も隔離されたという。「健康に影響が出るのだろうか。退職後、何か精神的な問題で辞めたことがあるかと聞かれるのか」

パイロットらは、政府が課しているパンデミック対策ルールの中には曖昧なものがあり、フラストレーションがたまると話している。たとえばパイロットは香港に戻ってから3週間、「不必要な社会的接触」を避けるよう求められる。だが、その見返りとして休暇を与えられるわけではない。

キャセイはロイターに対する声明の中で、10月末以降、パイロットの退職が通常の水準よりも増えていることを認めている。

「残念ながら、フランクフルトの一件が心情的に悪影響を与えている」とキャセイは言う。

厳しい乗務スケジュール

香港では米国や英国を含む多くの離発着地を「ハイリスク」に分類している。そのため、そういった国からの乗客を香港に運んできたキャセイのパイロットは、ホテルで2週間の隔離生活を送らねばならない。

こうしたフライトの乗員を確保するため、キャセイでは2月、希望者限定で「クローズド・ループ」式の乗務スケジュールの運用を開始した。5週間連続でホテルに滞在したまま、乗務以外は外出もスポーツジムの利用も禁じられ、それから2週間は自宅で過ごすという内容だ。

「少しでも稼ごうと思って、このスケジュールに参加した。昨年の50%減給で生活がぐっと苦しくなったから」と語るのは、2回の「クローズド・ループ」を経験した後、最近退職したパイロットだ。「もう、5回か6回目のクローズド・ループに入っている仲間がいる」

キャセイは25日、このプログラムの参加希望者が不足しているため、12月の需要ピーク期に香港行きフライトの一部がキャンセルになる見込みだと発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン、インドに対する軍事作戦開始と発表

ワールド

アングル:ロス山火事、鎮圧後にくすぶる「鉛汚染」の

ワールド

トランプ氏、貿易協定後も「10%関税維持」 条件提

ワールド

ロシア、30日間停戦を支持 「ニュアンス」が考慮さ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 7
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 8
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 9
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中