最新記事

日本社会

「あの林家の息子」と知られ仕事はクビ、結婚も破談に 和歌山カレー事件の加害者家族を襲った過酷な日々

2021年11月29日(月)17時11分
加藤 慶(ライター、フォトグラファー) *PRESIDENT Onlineからの転載

加害者家族を断罪する行為の異質さを、刑事事件に多く取り組む荒井俊英弁護士はこう語る。

「一応司法制度が機能しているはずなのに、一般市民が本来同じ立場にある一般市民(加害者やその関係者)をリンチする現象が見られるのは真の法治国家に成熟していない証でしょう」

加害者家族が守られる日は来るのか

newsweek20211129b.jpg犯罪被害者に関する法律の支援は充実しているが、加害者家族に対してはまだまだ理解不足で、重大な人権侵害を生んでいる。

「加害者の家族だとしてもプライバシー権や名誉権の侵害に対しては、法的手段を駆使して堂々と対抗すべきです。しかし、インターネット上に掲載された情報は、無制限に拡散される可能性もあり、完全に削除することは極めて困難です。そのため対象とされた人やその周囲の人たちが将来にわたり苦しむ重大な人権侵害を引き起こす危険があります。かと言って、インターネット上の情報の規制を法的に行うのは表現の自由等とのせめぎ合いから簡単ではないでしょう。非常に困難な問題です」(荒井弁護士)

取材後、浩次さんは帰る道中でも「被害者」の立場を非常に尊重していた。長女の死と向き合って悲しみも癒えない中、自らを戒めるようにこう語気を強めた。

「判決文を読んだんです。遺族の方の最後の言葉もありました。もし母親がやっているとしたら、取り返しがつかないし、えらいところに足を突っ込んでいるという感情が改めて芽生えたんです。ただ、母親の首にロープを掛けられるとなると......。被害者の方と対立したくて冤罪を訴えている訳じゃない。それだけは分かってほしいです」

この悲痛な声が、果たして報われる日が来るのだろうか。

加藤 慶(かとう・けい)

ライター、フォトグラファー
愛知県出身、大阪在住。1998年から月刊誌や週刊誌などに執筆、撮影。事件からスポーツ、政治からグルメまで取材する。2002年から編集プロダクション「スタジオKEIF」を主宰。共著に『プロ野球 戦力外通告を受けた男たちの涙』(宝島SUGOI文庫)などがある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

仏大統領、6月G7サミット後にトランプ氏を夕食会に

ワールド

レバノンは食料安保の危機と国連、イスラエル攻撃の南

ワールド

米EU 、 重要鉱物確保で合意間近と報道 中国支配

ワールド

台湾3月輸出額、初の800億ドル突破 AI関連需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 7
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中