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「あの林家の息子」と知られ仕事はクビ、結婚も破談に 和歌山カレー事件の加害者家族を襲った過酷な日々

2021年11月29日(月)17時11分
加藤 慶(ライター、フォトグラファー) *PRESIDENT Onlineからの転載

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林眞須美死刑囚の長男 撮影筆者

冤罪の可能性を知らない人からの誹謗中傷

「散々利用されて腹も立ちましたけど、ある時からマスコミの玩具になると決めたんです。どんな形でも出演して、それを見た人が検索して新たな事実を知るかもしれないと割り切った」

Twitterの開設は反論できる武器を手にした半面、新たな頭痛の種も生んだ。

「開設当初に来たリアクションは、ほとんどが誹謗中傷。大半は冤罪の可能性を知らない人です。母親本人の手紙を少しずつアップして僕が説明を加えましたが、それでも中には『すでに終わった事件で被害者もいるんだから絶対にやっている』と退かない人もいた。そんな人でも議論を重ねていると本人から『何も根拠がなかった。報道で死刑だと見ているから死刑だと思っていた。あなたに言われてネットで調べたら冤罪の可能性を知った』と謝られたんです。もちろん、全員が理解を示してくれる訳ではありませんよ。『絶対にやってる』と騒いで『何をお前が被害者ぶってんだ』と怒ってくる。そういう人に対しては、弁護団の主張や記事を本人にDMで送り、説明しています。

反対に、どんなに説明してもたたいていた人が、お姉ちゃんが亡くなった途端『頑張れよ。負けたらダメ』とすごく励ましてくれることもあった」

誹謗中傷する人にも手を差し伸べる

長女の死は浩次さんの倫理観にも影響を及ぼしたという。ネット上での誹謗中傷に対しても今は俯瞰(ふかん)して捉えている。

「お姉ちゃんが亡くなった時も『死ね』とか、『早く首をくくれ』と言われた。おそらく若い子だと思うんですね。でも、身内の死を経験してしまうと、こんなつらい言葉は絶対に書けなくなると思うんです。僕も画面越しで3・11の光景を見てても死の実感が湧かなかった。すごく遠い出来事のようにも思えた。でも、いま自分の大切な人が亡くなって、命の尊さに改めて気づかされた。若い子は経験がないから『死ね』とか、『消えろ』とか簡単に使ってしまうんだと思う」

当然ながら誹謗中傷は厳しく取り締まるべきで、浩次さんも決して認めているわけではない。だが、誹謗中傷する人に「若さゆえの過ちではないか」と手を差し伸べる。

日本独特のゆがんだ正義感が引き起こす誹謗中傷

配慮や気遣い、人の胸中を察して同調するバランス感覚が浩次さんにはある。取材陣はそんな彼と会話をして、大半の第一声が「普通なんですね」と驚嘆するのだという。豪快な父親に対して、浩次さんはすごく繊細だ。「普通」に見せるのは、生き抜く上で身につけた防衛本能。社会に迎合するため、自然と培った処世術ではないか。

「いじめられないように生きてきたから。どうやったら人からいじめられないようになるんだろうって......。人の目ばかり気にして、この人、本当はこんな風に思ってんじゃないかとか勘ぐってしまう。

人として1回死んでいるんですね。それで感情を失ってしまった。こう淡々と喋っている時も、心の片隅ではどこか諦めもあるんです」

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