最新記事

米選挙

バージニア州知事選の共和党逆転勝利はトランプ復活の予兆?

Glenn Youngkin Wins Virginia, Blazing 2022 Trail for GOP Through Schools

2021年11月4日(木)16時03分
ジェニー・フィンク
ヤンキン

ヤンキンの勝利が意味するものは? REUTERS/Jonathan Ernst

<バイデンの支持率が低下し民主党に逆風が吹くなか「トランプが支持した共和党候補者」が勝利>

11月2日に実施された米南部バージニア州の知事選は、共和党のグレン・ヤンキンが大接戦の末、民主党のテリー・マコーリフに勝利した。2022年11月の中間選挙に向けて、共和党が勢いをつけたかたちだ。

アメリカの複数のメディアは3日未明に、ヤンキンが51%の得票率で勝利を確実にしたと報じた。今回の州知事選は2022年の中間選挙の前哨戦と位置づけられており、「学校で『批判的人種理論』を教えるか否か」というような問題に関する共和党の方針が、有権者に支持されるかどうかを占う試金石だとも考えられていた。

(注:批判的人種理論とは、人種差別の原因は個人の偏見だけでなく社会の構造の問題だとする1970年代の学説。そうした社会構造の最たるものである奴隷制や人種隔離政策を教えることで愛国心が損なわれてきたとして、保守派が猛反発している)

2人の候補者の支持率が拮抗したバージニア州知事選では、批判的人種理論が大きな争点となった。ヤンキンは、州内の公立学校で批判的人種理論を教えることを禁じる方針を打ち出し、一方のマコーリフは、批判的人種理論をめぐる議論は「犬笛戦術(一部の有権者にしか分からない表現を用いて人心を操ろうとする政治手法)」だと述べ、保護者は学校の教育内容に注文をつけるべきではないと主張した。

選挙のストラテジストらは、2022年の中間選挙では、一部地方でこの問題が大きな争点になるだろうと示唆しており、今回のヤンキンの勝利はその見方を裏づけるものかもしれない。

穏健派にもアピール

民主党はヤンキンを「ドナルド・トランプの延長」と位置づけ、彼がトランプの支持を受け入れたことを批判。マコーリフは、ヤンキンの選挙運動を締めくくったのは、投票日前日にFOXニュースで放送されたトランプのヤンキン支持動画だった、と攻撃した。しかしヤンキン自身は、自らを穏健派として有権者に売り込み、トランプと手を組んではいるが、トランプを無条件に支持している訳ではないと主張。公正な選挙を訴え、投票システムの監査を支持してきたが、「ジョー・バイデンは大統領選に正当に勝利しなかった」とするトランプの主張までは支持しなかった。

バージニア州は近年民主党支持の傾向が強く、2020年の大統領選では、バイデンが同州でトランプに10ポイント以上の差をつけて勝利した。しかし知事選の投票日が近づくにつれて、ヤンキンとマコーリフの支持率は拮抗。両党は、来年の中間選挙の帰趨をも左右しかねない試金石として総力を傾けて戦ってきた。

今回のヤンキンの勝利が、実際にトランプ主義やトランプ本人の復活にどのような影響を及ぼすことになるのかはまだ意見が分かれる。ヤンキンは、トランプとやや距離を置く戦略を取ってきた。彼が目指したのは、トランプの支持基盤の機嫌を取る一方で、歴史的に民主党に票を投じてきた、地方のより穏健な有権者にもアピールすることだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中