最新記事

衆院選

総選挙で小さく勝ち大きく負けた野党、狙って得た「成果」は何もなかった

WINNING SMALL, LOSING BIG

2021年11月12日(金)19時02分
石戸 諭(ノンフィクションライター)
山本太郎代表

開票結果を待ちながらメディアに対応する山本太郎 SOICHIRO KORIYAMA FOR NEWSWEEK JAPAN

<10月31日の衆院選直前、東京8区で起きた「れいわ新選組」山本太郎代表の出馬宣言騒動についてキーパーソンが語った。そこから見えてきたのは、この地で勝利した「野党共闘」の「敗因」だった>

※この記事は11月9日発売号のニューズウィーク日本版に掲載された記事の後半部分です。記事前半:【総選挙ルポ】野党敗北のカギは、石原伸晃を破った東京8区にこそあった

ツイードのジャケットにデニム、赤いナイキのスニーカーを履いた白髪の男はコーヒーを飲みつつ「齋藤まさし、今の肩書は一革命家」と名乗った──。

かつて「市民選挙の神様」と呼ばれ、当選が難しいとされた候補を数多く当選させてきた選挙プランナーである。その1人、菅直人元首相の初当選から民主党の政権交代選挙までを伴走した。現在、15年の静岡市長選に関する公職選挙法違反で逮捕、有罪となり公民権を停止されている。一部の週刊誌では山本太郎のブレーンと書かれ、誌面をにぎわせた。

彼は山本のことを「太郎」と呼び、今回の衆院選についても水面下でアドバイスを送っていたことをあっさりと認めたが、ブレーンという位置付けは否定した。その点は一貫している。

「(昨年7月の)東京都知事選が終わってからも4〜5回くらいかな。選挙について会って話したよ。もちろん今回の衆院選の話題もあった。でも俺はブレーンでもなんでもなくて、こっちからアドバイスをすることもあるし、向こうから求められることもあるというだけ。最後は太郎が自分で決めるんだ」

今回の衆院選についてどんなアドバイスをしたのかと斎藤に聞くと、あくまで「自分の見解だけど、いいかい」と断った上で、とうとうとプランを語ってくれた。彼も東京8区の騒動をよく知っていた。

「太郎は10月1日には発表したがっていた。でも、俺はやめておけと言った。立憲側が本当に調整できているか疑問があったからな」

「東京8区から出るのは最悪の一手」

興味深い事実は、斎藤が山本の8区からの出馬そのものにずっと疑問を投げ掛けていたことだった。

「俺が大切にしていることは2つしかない。1つは同じ選挙は2度ない。2つ目は100万票も1票の積み重ね。票を掘り起こすためのベストな方法はどんな選挙でも1つしかない。それを早く見つけないと勝てない。立憲も太郎をうまく使わないといけないんだ。その意味では太郎が東京8区から出るっていうのは最悪の一手だったな」

この選挙は「れいわ」にとっても試金石になるものだった。19年の参院選で獲得した228万票で2議席という結果に加え、熱の籠もった演説は政界に衝撃を与えた。しかし、山本の勢いは明らかに落ちていた。本人の議席がないことに加え、東京都知事選の電撃出馬も起爆剤にならず、結果も残せなかった。衆院選の最優先課題は山本の国政復帰、そして比例で228万票以上を獲得し、議席の上積みを狙うことだ。

斎藤は弱小野党が強者に勝つためには、まずもって有権者を驚かせることが必要だと考えている。有権者は一度起きたことをよく覚えている。過去に山本は一度8区で出馬して、敗れている。その時は野党が分裂していたが、仮にまとまって勝ったとしても有権者はさほど驚かない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンク、榛葉副社長が会長に 今井会長は特別顧

ビジネス

アングル:与党優勢でも日本株に気迷い、ボラ高止まり

ワールド

英中首脳会談、不法移民問題で協力合意 ウイスキー関

ビジネス

NEC、純利益予想を2600億円に上方修正 国内I
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    またTACOった...トランプのグリーンランド武力併合案…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中