コラム

<衆院選>それでも日本人は新自由主義を選んだ

2021年11月01日(月)13時48分
日本維新の会の松井一郎代表

「真の勝者」日本維新の会の松井一郎代表(10月18日の党首討論会で) Issei Kato- REUTERS

<衆院選の真の勝者は、アベノミクスからの脱却をうたった岸田自民党でも弱者救済を訴えた野党でもなく、日本維新の会だった>

10月31日に行われた衆議院選挙は、自民党と立憲民主党が議席を減らし、日本維新の会が躍進するという結果に終わった。今回の選挙は、情勢調査も出口調査もバラバラで、とても難しい選挙となっていたが、維新の会が少なくとも3倍程度に躍進することは分かっており、そこだけは最後まで揺るがなかった。

二転三転する情勢

今年の春ごろ、菅首相はワクチン政策とオリンピックを成功させ、その余波で選挙に突入し大勝することを目標にしていた。しかしオリンピック期間中に日本を襲ったコロナ第五派の影響などにより、菅政権の支持率は低下し、自民党大敗がささやかれるようになった。菅首相は辞任することになった。菅首相の辞任によって一カ月間の自民党総裁選が行われ、岸田政権が誕生した。自民党は支持率を回復させ、選挙に勝利すると思われた。しかし、岸田首相は総裁選で訴えていた分配政策をトーンダウンさせ、静岡の参議院補選も敗北するなど失策が続き、総裁選効果は急速に低下していった。

一方、野党第一党の立憲民主党は、共産党との合意により多くの選挙区で候補者の一本化に成功する反面、最大の支持母体である労働組合「連合」系の離反を招き、選挙についてはよい流れと悪い流れの両面があった。こうした不安定な情勢を受けて、新聞社やテレビ局の情勢調査は混乱し、各社でまったく異なる結果が現れていた。

こうした中で確実だったのは、日本維新の会が在阪メディアの圧倒的支援のもと、近畿地方を拠点に確実に支持を伸ばしていったということだった。選挙区当選こそ近畿以外では出来なかったが、比例票を全国で積み重ね、今回の選挙唯一の勝者となった。

維新勝利の政治的意味

日本維新の会が勝利した要因を分析すれば様々あるだろう。それぞれの選挙区の事情や、メディア戦略の巧みさ。たとえばコロナ対策については、大阪府は人口当たりのコロナ死亡率が全ての都道府県の中で最も高い。全国に先駆けて第三波が大阪で到来したのは、コロナ禍にも拘わらず強行した都構想住民投票のせいともいわれているし、第四波、第五波では、いわゆる「自宅療養」によって、多くの感染者が放置され亡くなった。それにも拘わらず、吉村知事のコロナ対策への評価は6割以上もある。これではコロナ対策への支持率が2割を切り、辞任するに至った菅前首相も浮かばれないだろう。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏政権崩壊の可能性、再び総選挙との声 IMF介入リ

ワールド

再送トランプ氏とFRBの対立深まる、クック氏解任で

ビジネス

米8月CB消費者信頼感指数97.4に低下、雇用・所

ビジネス

米耐久財コア受注、7月は+1.1% 予想以上に増加
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    トランプ、ウクライナのパイプライン攻撃に激怒...和…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story