E・H・カーの『危機の二十年』を21世紀の今、どう読むべきか?...「ユートピアニズム」と「リアリズム」の2つの系譜
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<19世紀にイギリスで浮上した思想を、どのように位置づけていたのか?>
冷戦終結後の楽観はどこで裏切られたのか。E・H・カー『危機の二十年』を手がかりに、理想主義と現実主義のせめぎ合いから国際政治の30年を読み解いた話題書『危機の三十年──冷戦後秩序はなぜ崩壊したか』 (細谷雄一著・新潮選書)。その第1章「「危機の三十年」とは何か」より一部編集・抜粋。
国際政治学の最も重要な古典
日本語にも翻訳され、これまで広く読まれてきたE・H・カーの『危機の二十年』。なぜこれほどまでに国際政治学の世界で重要な地位を占めるようになったのだろうか。
カーはこの著書のなかで、国際政治を観る視座としてユートピアニズムとリアリズムという2つの系譜を二元論的に図式化して説明している。その上で、戦間期の国際政治をめぐる認識があまりにも前者に傾斜しており、国家間関係におけるパワーの要素を軽視していたことを批判した。
それゆえカーは、一般的にはリアリズムの国際政治学者として位置づけられるが、しばしば指摘されてきたように実際にはその両者の融合の重要性を強調していたのである。
カーが『危機の二十年』で描き、厳しい批判を加えたユートピアニズムとは、19世紀から20世紀半ばのイギリス社会に根付いていた、自由放任主義(レッセフェール)を前提としたリベラリズムの思想であった(*1)。
それは、通常の国際政治学で参照される、「リアリズム(現実主義)」の対抗概念としての「アイデアリズム(理想主義)」とは似て非なる概念であり、区別して考える必要がある。
カーの『危機の二十年』が前提とする社会は、あくまでも19世紀のイギリスであった。だとすれば、カーの批判するユートピアニズムを深く理解するためには、19世紀イギリスの政治文化や思潮を適切に理解することが不可欠となる。
それではカーは、19世紀にイギリスで浮上したユートピアニズムの思想を、どのように位置づけていたのだろうか。
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