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「中国封じ込め策には抜け穴がある」、パキスタン首相独占インタビュー

AMERICA CAN STILL BE A PARTNER

2021年10月7日(木)10時52分
トム・オコナー(本誌外交担当シニアライター)

――中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の進捗が遅いと懸念する声があるが、パキスタンは中国との連携からどのような恩恵を得ているのか。米バイデン政権が主導する途上国向けインフラ支援構想「ビルド・バック・ベター・ワールド」は、中国の主導する「一帯一路」構想と相いれないと思うか?

中国はCPECの下で今までに250億ドルもの投資を行っている。加えて200億ドル規模の複数プロジェクトが進行中で、さらに250億ドル規模のプロジェクトが控えている。

新型コロナのせいで一部に遅れが出るかもしれないが、現状でCPECの目標は順調に達成されている。今後も加速されていくはずだ。

アメリカの提唱する構想も、わが国は歓迎している。中国の「一帯一路」構想と競り合うものだとは考えない。どちらも途上国が独自の開発計画や持続可能な開発目標(SDGs)を達成する上で不可欠なインフラ構築を助けるイニシアチブだと評価している。

――今年は(国際テロ組織アルカイダの指導者)ウサマ・ビンラディンがパキスタンの領内で殺害されてから10年、彼が主導した9.11テロから20年の節目に当たる。この20年のアメリカによる「対テロ戦争」をどのように評価するか?

アルカイダは、少なくともアフガニスタン領内では無力化された。これは過去20年にわたるパキスタンとアメリカの協力の大きな成果だ。

しかしテロの根源にある問題(思想的な違いや社会・経済的な不公正など)は解決されていない。だからテロの温床となるような思想や言説が世界中に広まり、新たなテロ組織が台頭している。

一方で、イスラム嫌いの過激派やテロ組織も各地で台頭している。最悪なのがインドのヒンドゥー至上主義者だ。彼らは現政権の庇護の下で堂々と、少数派(と言っても実数では約2億人)のイスラム教徒に対するテロ攻撃を繰り返している。

こうした新たなテロリズムに対処するために、世界は新しい包括的な戦略を必要としている。

――長い目で見て、米軍の撤退はアフガニスタンとその周辺諸国にどのような影響を及ぼすだろうか。

(旧ソ連の侵攻以来)40年も続いた戦争・紛争で、アフガニスタンでは経済も社会も政治も深刻な打撃を受けた。しかし今は「長い戦争」が終わり、アフガニスタンにも周辺諸国にも平和と安定、成長がもたらされるとの希望がある。アフガニスタンで紛争と混乱が続くことは、わが国としても望まない。

(アメリカ主導の)国際社会は20年にわたり、アフガニスタンへの軍事介入を続けてきた。あの国の人々への責任を忘れることは許されない。ちゃんと関与を続ける必要がある。

こちらが望むのは、人道支援や経済協力、通信環境やインフラの整備を通じてアフガニスタンが安定を取り戻すこと。そしてアメリカも中国もロシアも、あの国の平和と再建に一致して貢献することだ。

しかし国内での対立が続き、周辺諸国と超大国との対立が続けば、あの国は再び暴力と紛争の舞台となりかねない。そうなれば新たな難民が発生し、アフガニスタンに潜むテロリストの脅威が増す。そして、この地域全体が不安定になる。

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