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独占取材

「中国封じ込め策には抜け穴がある」、パキスタン首相独占インタビュー

AMERICA CAN STILL BE A PARTNER

2021年10月7日(木)10時52分
トム・オコナー(本誌外交担当シニアライター)

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カーンにはタリバンとも太いパイプがある(写真はカブールの国際空港を警備するタリバン兵) MARCUS YAMーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

――アメリカはアフガニスタンから撤退する一方で周辺諸国、とりわけインドとの防衛協力を強化しようとしている。だがパキスタンはカシミール地方の帰属をめぐってインドと長年にわたり対立している。アメリカのインド接近は懸念材料か?

大事なのはアフガニスタン発のテロの脅威をなくすことであり、そのために必要なのは包括的なアプローチだ。この点で、わが国はアメリカを含む国際社会と協力していく。

日米豪印の4カ国連携を含め、アメリカがインドを軍事的に支援するのは中国を封じ込めるためだろう。しかし、この戦略には疑問がある。わが国は、インドが中国と敵対することはないとみている。ましてや、アメリカの戦略的利益に供するために中国と戦うとは思えない。

インドがひたすら軍備増強に走るのは南アジアで覇権を確立したいからであり、とりわけパキスタンを脅し、力で抑え込みたいからだ。今でもインドの兵力の70%は、中国ではなくパキスタンとの戦線に配置されている。だからこそ、わが国はインドに最新鋭の武器や軍事技術が供与されることを憂慮する。ただでさえ紛争の火種を抱えているのに、これ以上の軍拡競争が始まったらどうなるか。わが国もインドも、社会経済の発展や国民の福祉につぎ込む予算がなくなってしまう。

――パキスタンは中国と緊密な戦略的関係を築いてきた。米中関係の悪化に巻き込まれる懸念はないか?

わが国と中国の関係は70年来のもので、経済や技術、軍事だけでなく多方面にわたっている。だが、わが国は同時にアメリカとも緊密な関係を保ってきた。1971年に米中の対話を取り持ったのはパキスタンだ。中国との戦略的パートナーシップがアメリカとの協力関係を維持する上で障害になるとは考えない。

そもそもアメリカと中国が敵対する必要はないし、両国の利益にも反する。新型コロナウイルス対策や途上国の経済問題、そして気候変動に対処するにも、両国の協力が不可欠だ。この結論を、一刻も早く両国政府が共有してくれることを願う。

――9月17日に上海協力機構(SCO)の首脳会議が開かれた。アフガニスタンや地域の問題への対応について、パキスタンとしてどのようなメッセージを発信したか?

地域の現状について、わが国としての見解を述べ、アフガニスタンの現状がこの地域にもたらす困難に対処し、難局を打開するために考えられる道筋を示した。

わが国との関係において、インドが前向きな姿勢に転じれば、SCOはアジア大陸の安定と繁栄を促進するための有益なプラットフォームになり得ると考えている。

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