最新記事

NAVY SEALS

イラクの戦場でミス続出、「責任を負うべきは私だ」と言った指揮官から学ぶリーダー術

EXTREME OWNERSHIP

2021年10月4日(月)11時55分
ジョッコ・ウィリンク(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」指揮官)、リーフ・バビン(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」小隊指揮官)
元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」のジョッコ・ウィリンクとリーフ・バビン

筆者で元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」のジョッコ・ウィリンク(左)とリーフ・バビン COURTESY OF JOCKO WILLINK AND LEIF BABIN

<一瞬の判断ミスが生死を分ける戦争の最前線で、部隊のメンバーを生き残らせつつ任務を達成するために指揮官が学んだリーダー術。その1つにして最も重要なものは「究極の責任感」だ>

米海軍特殊部隊「Navy SEALS(ネイビー・シールズ)」は、Sea(海)、Air(空)、Land(陸)のどこでもあらゆる活動が可能という部隊の特徴にその名前の由来がある。

米軍最強部隊の1つである彼らは、2011年にウサマ・ビンラディン暗殺事件の実行者として世界にその名をとどろかせた。

ネイビー・シールズは2003年に始まったイラク戦争にも参加。米軍の死傷者が最も多く、狙撃手クリス・カイルの活躍でも知られる2006年のラマディの戦いでも常に米軍の先頭にいた。

この戦闘でシールズの精鋭部隊「ブルーザー」を率いたジョッコ・ウィリンクとリーフ・バビンが、戦場の過酷で貴重な経験を基にリーダーシップのあるべき姿を説いたベストセラー本が『米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ』(邦訳・CCCメディアハウス)だ。

最前線で命のやりとりを繰り返す日々の中で、部隊のメンバーを生き残らせつつ任務を達成するために彼らが学び取ったリーダー術は、ビジネスや日常生活でも生かせるはずだ。

ニューズウィーク日本版では、10月5日号の「ビジネスに役立つ NAVY SEALS 12のリーダー術」特集で同書の抜粋を掲載。

以下にその抜粋の一部を掲載する(第1回)。

――ニューズウィーク日本版編集部

magSR20211004navyseals-1-map.png

PETER HERMES FURIAN-ISTOCK 本誌10月5日号18ページより

【Part 1】究極の責任感

早朝の日の光が、辺りを覆う「戦場の霧」でかすんでいる。通りで武装勢力が火を付けたタイヤから出る煤(すす)、米軍の戦車やハンヴィーが路上で舞い上げる砂ぼこり、機銃掃射で粉砕された建物の壁から舞い散る粉状のコンクリート......。

私たちの装甲ハンヴィーが角を曲がり、銃声に向かって前進すると、前方の道路の真ん中に米軍のM1A2エイブラムス主力戦闘戦車が見えた。巨大な主砲を携えた回転式の砲塔が、ごく至近距離の建物に狙いを定めている。

粒子でかすんだ空気の向こうに、くすんだ赤色の霧が見えた。明らかに、そのエリアで米軍が使った赤色発煙手榴弾(スモークグレネード)によるもの。通常それは、「助けて!」の合図だ。

この軍事作戦のために、シールズは、戦火と暴力にまみれた街のさまざまな区域で、4つの分隊に分かれて行動していた。シールズの2つの狙撃チームは、米陸軍の偵察狙撃手やイラク兵の分隊と行動を共にしていた。

そして別のシールズ分隊は、ある地区全体から建物1棟ごとに敵を排除していく任務を担う、イラク兵と米陸軍の戦闘アドバイザーのグループに組み込まれていた。そして最後に、シールズの上級下士官アドバイザーと私(ジョッコ・ウィリンク)が、陸軍中隊長の1人と共に車に乗っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NATO事務総長の戦争準備発言は「無責任」、ロシア

ワールド

米H─1Bビザの10万ドル申請料、差し止めへ20州

ビジネス

中国、消費喚起へビジネス・金融システムの連携強化求

ビジネス

大企業・製造業の業況判断DI、3期連続の改善=12
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中