最新記事

アメリカ社会

【現地ルポ】リベラル州ハワイ、全米トップクラスのコロナ対策とその反動

2021年10月2日(土)14時30分
阿部 純(ハワイ大学マノア校客員研究員)

「セーフ・アクセス・オアフ」プログラムの開始後、この新たな規制に対して、ワイキキでは9月の18日と25日にデモが実施された。

18日においては、団体側が1万人参加の大規模なデモ行進を計画した一方、現地メディアによれば、実際の参加者は800人程度にとどまったという。事前の計画に比べれば、その規模はだいぶ劣る。25日のデモに関する報道はあまり見られないが、おそらく規模は18日と同程度だろう。

とはいえ、現場でデモを目の当たりにすると、それは「大規模」なものとして映る。ワイキキのメインストリートであるカラカウア通りに沿って、音楽を流し、プラカードや旗を掲げ、叫びながら行進する群衆。デモ隊の列は途絶えることがなく、交差点を渡るのも一苦労だ。まるでデモ隊が街全体を占拠するかのような勢いだった。マスクをしている参加者は見受けられなかった。

参加者の顔ぶれを見てみると若者から年配まで幅広く、ベビーカーを押す人、子供と手を繋ぐ人、ペットを連れて行進している人までいる。また、ハワイ州は非白人の割合が多いことで知られているが、筆者が見た限り、デモ参加者の人種構成は多様であった。

アメリカ本土では黒人のワクチン接種率が低く、黒人の多く暮らす地域での医療が不十分なことに加え、黒人コミュニティにおいてワクチンへの懐疑心が強いことが原因だと言われている。ハワイではネイティヴ・ハワイアンや太平洋諸島系の人々に同様のことが言われており、接種の遅れやワクチン政策への不信が問題になっている。

通行人や観光客は少し距離を置いて行進を眺めており、写真やビデオを撮っている人もいた。その多くの人はマスクを着用している。デモ参加者とは対照的な印象を受けた。

abe211002_hawaii3.jpg

アロハ・フリーダム連合が主催する「フリーダム・メガ・マーチ」(9月25日) Jun Abe

「反マスク」「反ワクチン」ではなく、「プロ・フリーダム」「プロ・チョイス」

先頭を歩くデモ隊が、GLORY、HONOR、POWERと書かれた旗を掲げている。アメリカの国旗やハワイ州旗を振っている人も多い。彼らは「ワクチン・チョイス」や「ワクチンパスポート廃止」と書いてあるプラカードを掲げ、「義務化廃止!(No More Mandate!)」と合唱しながら行進していた。「独裁政治がハワイを殺している」「共産主義こそ本当のウイルス」というプラカードも確認できた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中