最新記事

ハイチ

米国人宣教師ら17人誘拐のハイチギャング、「身代金払わなければ頭撃ち抜く」

Haitian Gang Threatens to Shoot American Hostages Unless Ransom Paid

2021年10月22日(金)16時10分
ゾーエ・ストロズースキー
首都のデモ

極端な治安悪化のうえ、基地局の燃料切れで「携帯電話も通じない」と抗議する男(10月18日、ポルトープランス) REUTERS/Ralph Tedy Erol/File Photo

<誘拐のみならずガソリンの流通を妨害するなど市民の生活を苦しめるギャング組織「400マウォゾ」>

10月16日にハイチでアメリカ人の宣教師ら17人が誘拐された事件で、犯行グループであるギャング組織が、要求どおりに身代金が支払われなければ、人質の頭を撃ち抜くと脅していることが分かった。AP通信が報じた。

問題のギャング組織「400マウォゾ」のリーダーは、21日にインターネット上に動画を投稿。この中で、人質殺害も辞さないと、ハイチのアリエル・アンリ首相とレオン・シャルル国家警察長官に行動を迫った。


ハイチ当局は今週に入ってから、400マウォゾが人質1人あたり100万ドルの身代金を要求していることを明らかにしていたが、人質に含まれる5人の子どもも身代金要求の対象になっているかどうかは分かっていなかった。AP通信によれば、誘拐されたのはアメリカ人16人とカナダ人1人、それに彼らの運転手を務めていたハイチ人1人だ。

青のスーツに大きな十字架のネックレスを身につけ、手に青い帽子を持った同組織のリーダー、ウィルソン・ジョセフは動画の中で、「要求どおりのものが得られなければ、これらのアメリカ人の頭に銃弾を撃ち込む」と宣言している。

またAP通信によれば、ジョセフの後ろには、蓋を開けた状態の複数の棺が置かれていた。棺には、最近殺害された400マウォゾのメンバーの遺体が入っているとみられる。ジョセフは動画の中で、「お前たちは私を悲しませている。私が流す涙は水だが、お前たちには血の涙を流させてやる」と述べている。

以下にAP通信の報道を引用する。

「誘拐犯のためにも祈りを」

誘拐された宣教師たちが所属するキリスト教援助団体「クリスチャン・エイド・ミニストリーズ」(米オハイオ州)は、ギャング組織のリーダーの動画がネット上に投稿される前に、記者会見を開いた。

同援助団体の広報担当であるウェストン・ショウォルターは、人質はアーミッシュ派やメノー派など保守的な再洗礼派の宣教師やその家族で、オハイオ州とミシガン州、ウィスコンシン州、テネシー州、ペンシルベニア州、オレゴン州の6州とカナダのオンタリオ州から現地を訪れていた。人質の家族たち(名前は明かされなかった)はショウォルターに託した手紙の中で、「神は我々の愛する者たちに、敵を愛せよという神の御意思を実行する、またとない機会を与えてくれた」と述べた。

クリスチャン・エイド・ミニストリーズは人々に、誘拐犯のためにも、誘拐された宣教師たちのためにも祈って欲しいと促し、またこのような状況への「対処について知識と経験がある人々」からの支援に感謝を表明した。ショウォルターは「人質の家族たちのために祈りましょう」と述べ、こう続けた。「彼らはつらい状況に置かれている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中