ロシア下院選は「無風」にあらず、強まる議会の意義と若者世代の存在感
Putin’s Party Wants a Big Win
与党「統一ロシア」が圧倒的多数を占める議会はプーチンの言いなりだったが(昨年3月に下院で演説するプーチン) EVGENIA NOVOZHENINAーREUTERS
<与党・統一ロシアの支持率が低迷するなかで9月17~19日に行われる下院選。過半数確保へプーチンが繰り出すアメとムチ>
9月17~19日、ロシア議会下院選挙(定数450)が実施される。議会の権限は大統領には依然及ばないものの、昨年の憲法改正後は特に経済分野で拡大した。下院議会は国民と政府の多様な層のコミュニケーションに不可欠な橋渡し役として、国民の不満や懸念を政府に伝える一方、国民に支援と寛大な援助を分配する役割も果たしている。
与党・統一ロシアは圧倒的過半数の336議席を維持しているが、支持率低下と国民の不満増大で試練に直面している。過半数割れの心配はまずなさそうだが、党内の結束とプーチン政権の正統性強化のカギを握るのは圧倒的過半数を維持できるかどうかだ。
ロシアの選挙は完全に自由公正というわけではないが、実際の投票自体の信頼性は増している。こうした信頼性向上の取り組みは、政府が国民の承認という形で信頼されたいがため、そして過去の選挙での票買収疑惑への反感に対抗したいがために生まれた。
いまだに、特に地方レベルでは何らかの選挙不正は起きるが、統一ロシアは何より、野党候補を締め出し、メディアへのアクセスを制限し、煩雑な規制を増やすなど、野党の選挙活動を制約することを重視してきた。
薄れる政治支配力の基盤
統一ロシアはロシア連邦に強力な政治支配力を持っているが、その基盤となる選挙による正統性は薄れ始めている。問題の1つは、2008年の景気後退以降、危機が相次ぎ、経済関連の公約を実現し切れていないことだ。
購買力低下と通貨安は政府が弱体化した印象を与えている。権威主義と腐敗との関連(野党の言う「泥棒政治」)のせいで、統一ロシアに対する圧力も増している。政府の支持率は低下、与党は19年の首都モスクワ市議選で議席の3分の1近くを失うなど選挙で後退している。
統一ロシアが目指すのは過半数確保だ。現在は下院の4分の3近い議席を占めており、議席減は深刻な結果を招きかねない。例えば与党は昨年、議会での圧倒的過半数を利用して(大統領の任期をリセットする条項を盛り込んだ)憲法改正案をスピード成立させたが、議席数が3分の2を下回れば、今後の憲法改正に大きな支障を来す恐れがある。
恐らくそれ以上に重要なのは、下院での議席が減れば、政党としての結束や、(政権に従順な)「体制内野党」を利用することが簡単にはいかなくなることかもしれない。