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アングル:ベネズエラ情勢、原油値下がり金上昇か 市場は地政学リスク再認識 

2026年01月05日(月)16時14分

写真はニューヨーク証券取引所。1月2日、ニューヨークで撮影。 REUTERS/Jeenah Moon

Amanda ‍Cooper Dhara Ranasinghe Saeed Azhar

[ロンドン/ニューヨーク 4日 ロイター] - 米軍に‌よるベネズエラ攻撃を受け、世界中の投資家は地政学リスクの高まりを再認識している。長期的に見れば、ベネズエラの膨大な石油資源が市場に出回り、リスク資産価格は上昇する可能性がある。ただ当面は安全資産への逃‌避が起きるかもしれない。

トランプ米大統​領は米国がベネズエラを掌握し、マドゥロ大統領は拘束されてニューヨークで裁判を待っていると発言。1989年のパナマ侵攻以来となる直接的な軍事介入に踏み切った。

ソルトマーシュ・エコノミクスのエコノミスト、マルチェル・アレクサンドロビッチ氏は「地政学的な緊張が引き続きニュースの見出しを支配し、市場を動かすと再認識させられる出来事だ。市場は、歴代の米政権下での対‌応に比べてずっと真剣にヘッドラインリスクと向き合う必要があることは間違いない」と語る。

<原油下げ、金は値上がりか>

米債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の元最高経営責任者(CEO)、モハメド・エラリアン氏は交流サイト(SNS)Xへの投稿で、マドゥロ政権転覆に対する経済・金融面の反応は不透明だとしつつ、「恐らく目先は原油と金の価格の乖離(かいり)を目にするだろう」と指摘。ベネズエラの後継政権次第で同国の石油輸出が増加するとの見方で原油は下がり、不確実性の高まりを背景に安全な資産とされる金が買われて値上がりすると予想した。

金価格は既に昨年、米国の利下げや地政学的緊張を受けてほぼ46年ぶりの上昇幅を記録し、過去最高値を更新している。

<石油資源開発の魅力と課題>

マ​ドゥロ氏拘束の数時間前、トランプ氏は米国の石油企業がベネズエラの石油生産を復活させる⁠ため多額の投資をする準備をしていると述べた。これは、供給拡大によるエネルギー価格下落を通じて世界経済の成長‍が押し上げられる可能性を秘めている。

アネックス・ウエルス・マネジメントのチーフ経済ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブソン氏は「投資の観点では、長期的に大量の石油埋蔵量を解放できる。市場は時折、紛争が想定される段階でリスクオフに傾くことがあるが、紛争が始まればすぐリスクオンに切り替わる」と説明する。

カンバーランド・アドバイザーズの共同創業者、デービッド・コトック氏は、埋蔵量解放が長‍期的に原油価格を下げることになれば、株式に強気の影響を与えてもおかしくないと主張。「それが今後1─2年‍で起きるの‌か、そして市場がそれを事前に織り込むかは、それぞれ別の問題だ」と話す。

もっとも大半の‍ストラテジストは、ベネズエラの石油生産量を相応に増加させるには数年かかる可能性があるとの見方で一致している。同国の生産量は、2000年代に政府が石油事業を国有化して外国企業の投資が途絶えるとともに、その後の事業運営がうまくいかなかったため、過去数十年間で急減した。現在ベネズエラで操業している米国の大手石油企業はシェブロンだけだ。

複数の専門家はロイターに、投資を望む企業は治安上の懸念、老朽化したインフラ、⁠米国のマドゥロ政権転覆作戦の合法性を巡る疑念、長期的に政治が不安定化する恐れといった課題に対処しなければならない、との見方を示した。

<ドルの地位低下も>

フランクリン・テンプルトンのチーフ市場⁠ストラテジストで、フランクリン・テンプルトン・インスティテュ‍ート責任者を務めるスティーブン・ドーバー氏は、SNSのリンクトインへの投稿で、米政府が一方的に行動し、武力を行使する意思を示していると述べ、これは各国が自国の安全保障により多くの支出を振り向ける傾向を強める可能性があると予想した。ドルの安全​資産としての役割は不確実性が強まり、国際的な制度基盤の劣化を巡る疑念が一段と広がるだろうという。

ドーバー氏は、長期的に見るとより安定して生産的で繁栄したベネズエラは、世界に対して重要な石油供給の役割を提供できると分析。ただ「それは世界経済にとって重大であるものの、ベネズエラのそうした潜在力を引き出すには政治的な安定と相当な投資が不可欠になる」とした。

ロイター
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