最新記事

香港

イギリスが受け入れる香港からの脱出者に、中国スパイが紛れ込んでいる

Exiles Fear China Spies

2021年8月18日(水)18時50分
デービッド・ブレナン
香港民主派デモ

ロンドンの中華街で民主派デモを行う香港からの移住者たち(2021年7月) BELINDA JIAO-SOPA IMAGES-LIGHTROCKET/GETTY IMAGES

<中国による香港弾圧への「対抗措置」として開かれた渡英への道が、中国に悪用される日>

香港からイギリスへの移住申請者の中に、中国スパイが紛れ込んでいる――英タイムズ紙は8月9日、英政府関係者のコメントとして、英政府がその存在を「認識している」と報じた。中国が香港の民主活動家への弾圧を強めるなか、イギリスは香港を脱出する移住希望者に特別ビザを発行している。このビザ申請者の中に、反体制派に成り済ました中国の工作員が紛れ込んでいるというのだ。

中国は2020年6月、反体制的な言論を封じる国家安全維持法(国安法)を施行し、香港民主派への弾圧を強化。対抗措置として、香港の旧宗主国であるイギリスは今年1月、1997年の香港返還前に生まれた香港市民が持ち得る「英国海外市民(BNO)」旅券の保有者に対し、英市民権取得への道を開く特別ビザの申請受け付けを開始した。

特別ビザは移住希望者とその家族に5年間の滞在を許可し、イギリスでの就労や修学を可能にする。うまくいけば5年後には英国市民権を申請する道が開ける。

タイムズ紙の報道によれば、英政府は特別ビザ申請者の中に中国スパイが潜入しているとの認識に立ち、申請手続きでは「厳しい身元調査」を行っているという。英内務省の報道担当者は本誌に対し、ビザ申請者にスパイの可能性のある者が何人いるか、人数についてのコメントを避けた。

国安法を支持していた人物に注意

香港の民主活動家で既に解散された民主派政党「香港衆志(デモシスト)」の元主席、羅冠聡(ネイサン・ロー)は昨年7月、中国による弾圧に身の危険を感じてイギリスに亡命。デモシストを共に立ち上げた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)と周庭(アグネス・チョウ)は、国安法違反で逮捕され実刑判決を受けている。

ローは本誌の取材に対し、特別ビザ申請には在英香港人を守るためさらに厳しい身元調査が必要だと語る。中国と香港の政府職員や公安関係者の親戚など、国安法を公に支持していた人物たちに特に注意すべきだと主張。また、中国政府が共産党への批判統制や海外での影響力強化に使う「統一戦線」工作とつながる人物にも警戒すべきだという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

自民党総裁に高市氏、初の女性 「自民党の新しい時代

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中