最新記事

インタビュー

【独占インタビュー】菅首相「五輪で若者や子供に夢を与える機会を提供したかった」

What Suga Is Thinking

2021年8月14日(土)18時04分
ナンシー・クーパー(本誌米国版編集長)、ビル・パウエル(ワシントン特派員)

──中国からのサイバー攻撃にはどう対処するか。

経済大国となった中国は、国際ルールを守り、大国としての責任を果たすことが極めて重要だ。これは日本経済だけでなく、世界経済の発展にとっても重要になる。

サイバーセキュリティーに関しては、アメリカだけでなく、同じ考えの国々とも緊密に連携する。官民一体の取り組みになるだろう。アメリカとの間ではハイレベルな機会を活用したい。中国ともコミュニケーションを続け、問題を一つ一つ解決しながら、日本の立場を主張するべき場面では主張する。

──中国をルールに従わせるために、日本は何ができるか。

貿易や最先端技術をめぐる競争などの問題は、国際社会も懸念している。(中国との)考え方の相違もある。日米の信頼関係を基に、協力していくことになる。

サイバー攻撃や安全保障などの分野は特に、同盟国や、同じ考えの国々の協調がとても重要だ。中国が関与するこれらの問題は、協調して対処する必要がある。

──中国から撤退して日本国内や東南アジアにサプライチェーンを移す日本企業に、補助金を出している。

安定したサプライチェーンは、安全保障の観点からも非常に重要だ。単に中国を切り離そうというわけではない。しかし、企業がサプライチェーンを日本国内に戻すことや、海外のサプライチェーンを中国からASEAN(東南アジア諸国連合)諸国に広げ多元化を図ることを支援している。

──台湾をめぐり米中が対立した場合、沖縄の潜在的な脆弱性をどう考えるか。

沖縄の人々は日本国民であり、従って沖縄を防衛するのは当然のことだ。沖縄には多くの米軍基地がある。日米同盟に基づいて、沖縄が確実に守られる。これは日本政府の非常に重要な目標だ。

──日本の防衛費についてどう考えるか。

安全保障をめぐる環境は厳しさを増しており、日本国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重大な使命だ。宇宙やサイバー空間、電磁スペクトルなど全ての領域で、日本の能力を有機的に統合して防衛力を高めていく。

厳しい財政状況でも、必要な防衛費は予算化されるだろう。ただし、改めて言っておきたいのだが、日本政府は防衛費をGDPの1%以内に抑えるというアプローチは取っていない。

── バラク・オバマ米政権(当時)が最初に提案したTPP(環太平洋経済連携協定)に、アメリカが復帰することを期待しているか。

アメリカが提案したTPPにアメリカが参加しなかったことは、非常に残念だ。今は日本が主導している。イギリスなどほかの国々も参加を希望している。自由貿易の拡大は非常に重要であり、多くの国がTPPに参加することは戦略的にとても重要だ。

今年は日本が議長国として、自由で公正な貿易の促進に努める。率直に言って、私はアメリカのTPP復帰を望んでいるが、それには困難もあると理解している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、第3政党始動計画にブレーキ=WSJ

ワールド

米大豆農家、中国との購入契約要請 トランプ氏に書簡

ワールド

韓国は「二重人格」と北朝鮮の金与正氏、米韓軍事演習

ワールド

トランプ政権、ワシントン検事局に逮捕者のより積極的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中