最新記事
中国

東京五輪開催に反対する人は反日なのか?

2021年7月4日(日)16時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
安倍晋三

安倍晋三前首相 Kim Kyung-Hoon-REUTERS

安倍前首相が月刊誌で「反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対している」と言っているが、そうだろうか? 反対しているのは主としてコロナ感染が広がり日本人の命が脅かされるのを心配しているからではないのか? 偶然、同月号に厳しく中国を非難する論考を書きながら、一方ではコロナ禍での東京五輪開催には反対している者として私見を述べたい。

安倍前首相の主張

安倍前首相が月刊誌『Hanada』における対談で、「東京五輪を政治利用する野党に向けた発言」という流れの中で、以下のように言っている。

──極めて政治的な意図を感じざるを得ませんね。彼らは、日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか。共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています。朝日新聞なども明確に反対を表明しました。(引用ここまで)

野党が東京五輪(東京オリンピック・パラリンピック)開催に反対しているのは、「菅政権を引きずり降ろすために、五輪を政治利用している」のであって、これは「極めて政治的意図」に基づいたもので、共産党(遠藤注:日本共産党)や朝日新聞などの「反日的人たちが五輪開催に強く反対している」と言っているという流れになっている。

たしかに一部の党派やメディアが歴史認識において日本を誤導し、結果反日的となっていることは否定しない。しかし6月27日のコラム<河野太郎の父・河野洋平等が建党百年に祝電――中国共産党万歳!>にも書いたように、自民党の中にも「河野談話」といった歴史的に反日的論説を述べ、世界的に大きな影響を与えている人もいるので、党派で決めるわけにはいかないかもしれない。

私はたまたま同月号に<米中「悪魔の密約」ウイグルジェノサイド>という、極めて強く中国を批判する論考を掲載して頂いているので、同じ雑誌で安倍氏がこのようなことを仰っておられることに関しては興味を抱く。

月刊誌『Hanada』は、日本の国益に沿う内容であるならば、さまざまな角度からの主張を広く網羅するという寛容さがあり、同じ雑誌の中で真逆の主張であっても、同時に掲載されている場合も頻繁に見受けられる。私はこの編集姿勢を高く評価しているし、特に編集者の強い正義感と公平さには頭が下がる。

この視点を基本とした上で、以下の論考を展開する。

私が東京五輪開催に反対する理由

私自身はコロナ禍における東京五輪の開催には反対だ。

一つには、開催すればコロナ感染が拡大することは十分に予測されることで、日本人の命がより多く失われることが懸念されるからだ。

私の友人のご親族はコロナに罹ったが高齢のために入院させてもらえず、すなわち入院患者のベッド数が足りないので命の選択をされてしまい、亡くなられた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中