最新記事

日米株価

株価の日米格差は縮小へ ワニの口は年内に閉じる

2021年8月10日(火)20時21分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)

米国では1年後の企業業績と株価にギャップが生じており、景気回復による業績改善を株価がかなり先取りしている格好だ。もっとも株価が景気や企業業績の変動を半年~1年くらい先取りするのは通常のことだが、株価水準と13ヶ月目以降の業績予想から逆算すると、現在の米国株は2年以上先の業績改善まで織り込み済みだ。

nissei20210810175603.jpg

ミニバブルともいえる米国株高を演出しているのは、FRB(米連邦準備理事会)による未曾有の金融緩和だろう。今年5月、米国の消費者物価指数(CPI)が市場の予想を超えて急上昇すると、市場ではFRBが緩和縮小の開始を前倒しするのではないかといった懸念が台頭し、株価が急落する場面があった。

米国の物価が過熱するとFRBが早期の緩和縮小に追い込まれかねない。緩和縮小は米金利上昇を招き、企業の業績改善を通常よりも先取りした(=利回りが低い)米国株の魅力が低下し、株価急落に繋がる恐れがあるからだ。

その後、パウエルFRB議長が「粘り強く緩和状態を続ける姿勢」を繰り返し強調したこと等を受けて、金融市場では早期の緩和縮小を警戒するムードは遠のいた。コロナ変異株による景気回復ペースの鈍化懸念も重なり、5月のCPIショックで一時1.7%強まで急騰した米国の長期金利は1.2%程度に低下、米株式市場も落ち着きを取り戻した。

3――日本株優位で、ワニの口が閉じる公算

今後は年末にかけて米国株が軟調に推移する一方、日本株は底堅い展開が想定される。米国株は前述のとおり割高な水準にあり、米国の物価や労働市場、コロナ変異株の動向、要人発言などに敏感に反応しやすい。

特に、ミニバブルともいえる昨年来の米国株高を演出してきたFRBの緩和縮小が現実味を帯びてくると、利益確定売りに押されやすくなるだろう。早ければ8月26~28日のジャクソンホール会議前後、遅くとも9月21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)がターニングポイントになる可能性が高いとみられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送米、NATO東部地域から一部部隊撤退へ=ルーマ

ワールド

Azureとマイクロソフト365で障害、利用者数万

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で「的を絞った」攻撃 停戦履

ビジネス

米キャタピラー、7─9月期は増収 AI投資受け発電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 7
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 10
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中