最新記事

米株式市場

ゲームストップ株を暴騰させたアマチュア投資家たちの反乱と疑惑の幕切れ

Individual Investors Using GameStop to Game the System Risk Losing It All

2021年1月29日(金)16時55分
スコット・リーブス

いかにもオールドエコノミーな感じのゲームストップの株価が2万%近く急騰(1月27日、マンハッタン) Carlo Allegri-REUTERS

<株価乱高下の背景には結束してゲームストップ株を買い上げ株価を吊り上げた怒れる個人投資家たちの存在が>


米株式市場では、ビデオゲーム小売チェーン「ゲームストップ」の株価があり得ない高騰を続けた後、一転、半値まで暴落したことが大きな注目を集めている。

ただの投機ではない。急騰の背景にはウォール街を支配してきたヘッジファンドに大損させる目的で、ネット上で意気投合したアマチュア投資家集団が株価を吊り上げていたようだ。そこに普通の小口投資家も参加して、株価はますます上がった。

彼らの取引を支えたのは、「株式市場を民主化する」を旗印に手数料無料で人気を博す、手数料無料の投資アプリ、その名も「ロビンフッド(金持ちから盗んで貧乏人に分け与える義賊)」だ。ところがそのロビンフッドが、突然小口投資家たちを見限り、株価は暴落。いったい何が起こったのか──。

ゲームストップは、時代遅れのショッピングモールでビデオゲームのパッケージソフトを売る二流の、衰退しつつある企業のはずだった。しかしその株価はここ数週間で急騰。1月28日の午前には、過去52週間の最安値である2.57ドルから1万8693.77%上げて483ドルを記録した。しかしその後は55.8%も急落し、同日の終値は193.60ドルとなった。

GME_YahooFinanceChart (1).jpg

株価が暴落するほうに賭けて空売りを仕掛けたヘッジファンドのポジションが強制的に決済される「ショートスクイズ」が発生したのだろうと、投資調査会社モーニングスターの米市場担当ストラテジスト、デーブ・セケラは本誌に語った。大損をしたはずのヘッジファンドは教訓を学ぶべきだと。

「ショートスクイズは何も新しい手法ではない。機関投資家は長年、この手法を使ってきた」と彼は調査メモの中で述べた。「今回、何が新しい要素かといえば、取引に参加した人々だ。個人投資家が『クラウドソーシング』で大量に買い上がったため、空売り投資家が大きな打撃を受けた」

巧妙な株価操作なのか

別のアナリストは、株価を吊り上げた者たちには、株価を操作しているという自覚があったと指摘した。

ピッツバーグに拠点を置く非営利の調査機関「ザ・ファンデーション・フォー・ザ・スタディー・オブ・サイクルズ」のリチャード・スミス最高経営責任者は、「これは巧妙な作戦だったのだと思う」と本誌に語った。「背景には、株取引で多額の利益を叩き出すヘッジファンドなど機関投資家などへの怒りがある。彼らの中には、手持ちの資金を全部ゲームストップに注ぎ込むと息巻く者もいたが、そんな常軌を逸した取引をしていないことを願っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中