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習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結──欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議

2021年7月16日(金)10時52分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

しかし、ここにきて、ウイグルの人権問題が大きく立ちはだかり、中国の進路を厳しく阻んでいる。

ラインハルト・ビュティコファーは記者会見で「中国側はひどい計算ミスを犯した」と指摘した上で、「中欧投資協定は少なくとも2年間は批准されない」との見方を示した。

習近平、独仏首脳に審議復帰を懇願

窮地に立った習近平は、建党百年式典が終わるとすぐに、ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領に呼び掛け、中独仏首脳のリモート会談を7月6日に行った。

日本では、独仏が中国に「ウイグル人権問題の解決を迫ったが、習近平からは何の反応もなかった」という形で報道されているが、なんとも偏った偏向報道に呆然とした。

フランスの報道「20minutes」「Elysee.fr」あるいはドイツの連邦政府プレスなどを見ると、あくまでも「中欧投資協定」と「中欧指導者会議」に関することがメインテーマで、習近平は何とか「中欧指導者会議」を再開し、「中欧投資協定」の審議を再開してくれと懇願している実態が浮かび上がってくる。

独仏首脳はどうやら「中欧指導者会議の再開」も「中欧投資協定」の審議入りも賛同するが、「なにせ、欧州議会がそれを阻んでいるのでねぇ・・・」というニュアンスの表現で逃げている。

フランスの報道には、もちろんウイグルの人権問題に関しても話し合ったということが最後に取り付けたように少しだけ書いてはあるが、これは欧州議会あるいは自国民への「主張しましたよ」という「弁明」のようなもので、それがメインテーマとは解釈しにくい。

そもそもこのリモート会談は習近平が必死になって呼びかけたもので、ウイグル問題がテーマであったような報道をすると、いま世界がどこに向かって動いているのかを見誤らせる。

中国政府側では、気候変動の問題とか、コロナワクチン普及あるいはアフリカ支援の問題など、10月末にローマで開催されるG20に向けて中国は責任ある行動を取った的なニュアンスで報道している。

王毅外相もEUに懇願

7月8日、王毅国務委員兼外相は、ボレルEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長とテレビ会議を行ったと中国の外交部が報じている

中国政府の報道なので、相当に引き算をして受け止めなければならないが、それを前提とすれば、王毅はおおむね以下のように語っている。

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