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10年戦争で崩壊したシリア、国民をさらに苦しめる「最悪の飢餓」が迫る

Biden to Prod Putin on Syria Relief

2021年6月17日(木)17時50分
コラム・リンチ(フォーリン・ポリシー誌外交問題担当)

多くの国連関係者にとって、バイデン政権のシリアへの関与は米政府の国際舞台における影響力と、国際システムを意のままに動かす能力を改めて問う機会でもある。さらにトランプ前政権時代にはほとんど見られなかった、各国間の政策を調整する手腕を示すことになる。

「アメリカの関与の質と重要さは、トランプ政権下とは比べようがないほど変わっている」と、シンクタンク国際危機グループのリチャード・ゴワンは言う。「個人的には、アメリカが多国間外交に復帰しているという言葉が、初めて現実味を帯びてきた」

一連の外交戦略はアメリカにとって、ロシアと建設的に協力できる部分があるかどうかを見極める場にもなる。「アメリカはこれを、シリア問題だけでなく、より全般的なモスクワとの関係を見定めるための試金石と位置付けている」と、ゴワンは言う。「ロシアが何らかの妥協をする気があるかどうか、確認するテストでもある」

米ロの駆け引きの行方

一方で、アメリカは人道支援や過激派組織「イスラム国」(IS)の制圧を掲げることで、包括的な政策が足りないことを隠しているのではないかという指摘もある。シリアでロシアやイランの影響力と権力が拡大していることや、大規模な戦争犯罪、シリアが化学兵器プログラムを維持していることなど、さらに困難な課題に対処する政策が求められている。

「シリアの問題が全てなくなることはない」と、トランプ前政権でシリア政策特別代表を務めたジェームズ・ジェフリー元駐イラク米大使は警鐘を鳴らす。プーチンが見返りなしにライフラインを開放することはなく、「ロシアは譲歩を求めてくるだろう」。

ジェフリーによると、かつてシリアをめぐるアメリカとの2国間協議に出席したロシア側の担当者は、他国や国際開発機関がシリアの復興に投資することを妨害するのをやめるようにといった要求を一方的に並べ立てた。

「彼らはアサド大統領への制裁を解除し、復興を認めてほしいと求めてきたが、私たちはノーと言い続けた」

From Foreign Policy Magazine

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