最新記事

中国

三人っ子政策に中国国民の反応は冷ややか 「二人目さえ欲しくない」理由

China’s Three-Child Policy Won’t Work

2021年6月9日(水)18時57分
ブライアン・ウォン(オックスフォード・ポリティカル・レビュー誌編集長)

都市部では人口増と都市の膨張に伴って、渋滞、環境汚染、インフラの逼迫といった問題も増えている。地方でも労働集約型産業から機械化された製造業などへの移行が進んでおり、子供の多い家庭が得をするとは限らない。

今の状況で子供を3人持つことが奨励されても、強いインセンティブは見当たらない。例えばシンガポールでは出生率を上げるために出産・育児や医療に支援金を出し、子供が3人以上いる家庭に公営住宅入居の優先権を与え、若い母親に対しては税金を優遇している。中国政府も少子化に本気で取り組むなら、子供を3人以上持つ「貴い務め」を果たそうとする国民にもっと報いるべきだろう。

第2に「三人っ子政策」は、女性の人生、権利、利益に配慮を欠いているという批判がある。中国の女性は人口政策の大幅な変更のたびに、貧乏くじを引かされてきた。SNSには、こんな書き込みがあった。「私たち女性の基本的な社会経済的自由を支える政策や保護措置がない限り、仕事を含む将来の計画を危うくしてまで、女性はさらに子供を産もうとは思わない」

女性が貧乏くじを引く

中国企業の最高幹部レベルに女性が占める割合は、経済の開放と自由化が本格化した1990年から着実に低下している。2019年の時点で、上場企業の女性役員の割合は10%程度だ。原因の1つに、成功した女性はいずれ子供をたくさん産むから、企業は育児の負担が少ないと思われる男性を優遇したほうがいいという考えがあった。

多くの国と同じく中国の女性も、仕事か子育てかという選択を迫られる。経済状況が不安定な今は、多くの女性が仕事を選ぶ。

さらに根本的な要因として、中国では個人主義的な傾向が強まり、個人の選択が重視され始めている。いま20~30代の中国女性は前の世代よりも、結婚して子供を産み、仕事を辞めるという伝統的な期待に逆らってきた。

ここに三人っ子政策の大きな誤解が見える。この政策は「女性に子供を産む機会を与える」という趣旨だが、本当の問題は「女性が子供を産みたいかどうか」なのだ。

政府が現実の問題に取り組むには、育児関連のコストと弊害を大幅に削減してフルタイムの女性労働者の負担を軽減するとともに、家事の平等な分担を推進する必要がある。「女性は天の半分を支える」と毛沢東は言ったが、実際には女性は育児負担の大部分を背負っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-イラン、インド船籍ガスタンカー

ワールド

イラン新指導者、負傷で姿見せない公算 外見損傷か=

ワールド

キューバ、米と協議開始 石油封鎖の影響深刻化

ビジネス

米個人消費1月堅調、PCE価格指数前年比2.8%上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 8
    北極海で見つかった「400年近く生きる生物」がSNSで…
  • 9
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 10
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中