最新記事

教育

人生の「成功」を左右する子ども時代の読書活動

2021年6月9日(水)10時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
子ども期の読書体験は重要

成功している人は、どんな子ども時代を過ごしたのか? Imgorthand/iStock.

<30〜40代男性の高収入層では、子ども時代によく本を読んだと回答する人の比率が飛び抜けて高い>

「成功している人は、どういう子ども期を過ごしたか?」。雑誌でこういう特集をよく見かける。子育て中の親は非常に関心があるだろうし、「こういう教育をしたら、こういう人間になる」とは、教育学の観点からしても興味深いテーマだ。

この手の主題に接近する場合、長期にわたる追跡調査をするのが望ましいが、費用や手間の点で現実的でない。そこで、大人の対象者に子どもの頃を振り返ってもらう回顧法がよく用いられる。やや古いが、2012年2月に国立青少年教育振興機構が実施した『読書活動が及ぼす効果に関する調査』では、成人5000人ほどに子ども期を振り返ってもらい、現在の地位や生活状況との関連を探っている。

この調査の個票データを使って、冒頭の問いにアプローチできる。30~40代の男性を年収によって3つのグループに分け(300万未満、300~749万、750万以上)、子ども期がどうだったかを比較してみる。この調査は、子ども期の読書活動が成人後の人生に及ぼす影響を明らかにすることを狙っている。<表1>は、小学校低学年時に7項目の読書活動を「何度もした」と答えた人の割合だ。

data210609-chart01.png

赤字は3つの群で最も高い数値だが、項目によって異なる。昔話、マンガは低収入層で最も高く、それ以外は高収入層の経験頻度が最も高い。

4番目の「本を読んだこと(マンガ以外)」は、高収入層の数値が飛び抜けて高い。読書が高い教育達成につながり高給の仕事に就けたのか、能力のある人が好んで本をたくさん読んだのか、因果経路は定かでないが、読書は成人後の成功可能性とつながっているかもしれない。勉強ができるようになるとかいう、せせこましいことではなく、物事の本質が分かるようになる。法律でも、「読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものである」と言われている(子どもの読書活動推進に関する法律第2条)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、AI・エネルギーに700億ドル投資へ 

ビジネス

英中銀総裁「不確実性が成長を圧迫」、市場混乱リスク

ビジネス

米関税措置、国内雇用0.2%減 実質所得も減少=S

ワールド

ゼレンスキー氏、スビリデンコ第1副首相を新首相に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中