最新記事

中国

バイデン対中制裁59社の驚くべき「からくり」:新規はわずか3社!

2021年6月7日(月)11時46分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

判決では「シャオミーの株価がリストへの追加以降9.5%下落したことなどにより、既に回復不能な損害を受けていると判断される」と説明していた。

実際のところは、たとえば中国の「証券時報網(網:ウェブサイト)」に示されているようにシャオミーの株の多くはアメリカの外資系証券会社が持っており、たとえばJPモルガンは12.35%、シティバンクが10.22%、モルガン・スタンレーが2.34%となっており、3社の合計保有比率は24.91%に達している。ほかにもイギリスのロンドンに本社を置く世界最大級の証券会社であるHSBCが27.01%、スイスに本社を置く証券会社UBSグループが5.16%を占めており、制裁によって困るのは欧米であり、中国ではないという事情もあった。

結果、5月12日にバイデン政権下の国防総省は、シャオミー をブラックリストから除外すると宣言した。

ということは、5月12日の時点で、バイデン政権の「対中融和策」が垣間見えるという状況だったと言えよう。その流れの中に劉鶴とキャサリン・タイおよびジャネット・イエレンとのリモート対談が実現していたわけだ。

以上の3点から、6月3日の「中国企業59社に対する投資禁止令への署名」には「何かおかしい」、「何かある」という直感が働いたのである。

「インチキ」にも近い、驚くべきブラックリストの「からくり」:新規追加は3社のみ!

この直感は、驚くべき形で解答を運んできてくれた。

まず、トランプ政権時代とバイデン政権におけるブラックリストを拾い上げ、バイデン政権になってから「新たに追加された制裁企業」は具体的に何という企業で、それが国有や地方政府の公営なのか、それとも民営企業なのか、そしてその中に外部資本がどれだけ入っているかをチェックしてみようと思ったわけだ。

しかし、そのようなものを一覧表にした情報はどこにもなく、やむなくバイデン大統領が署名したときの情報をホワイトハウスのブリーフィングルームにある"Executive Order on Addressing the Threat from Securities Investments that Finance Certain Companies of the People's Republic of China"(中華人民共和国の特定の企業を資金源とする証券投資からの脅威に対処するための大統領令)から拾い出し、それをトランプ政権時代のリストと比較しようとした。

トランプ時代は制裁対象者を国防権限法(NDAA)に基づいて決定していたが、今年6月3日の行政命令で今後は全て財政部(The Secretary of the Treasury)がリストを決定することに変更された。そのためトランプ時代のリストは、国防総省にある。

そこで2021年1月14日、トランプ退陣の一週間前に発表された国防総省のサイトにある"DOD Releases List of Additional Companies, In Accordance with Section 1237 of FY99 NDAA"(国防総省がFY99 NDAA第1237条に基づき、追加企業のリストを発表)からトランプ政権時代の制裁対象企業を拾い上げることにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中