最新記事

東京五輪

東京五輪アメリカ代表ユニフォーム、「金持ち白人」的すぎる問題

White, White, White!

2021年5月15日(土)15時06分
クリスティーナ・コーテルッチ
東京五輪閉会式用の米選手団のユニフォーム

過去の五輪に比べれば進歩も見られるが(東京五輪閉会式用の米選手団のユニフォーム) PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY RALPH LAUREN

<老舗ラルフ・ローレンが手掛けるデザインが、いつも白人支配層階級的なものになる理由>

4月14日、東京五輪の閉会式でアメリカ選手団が着る公式ユニフォームが発表された。老舗ブランドのラルフ・ローレンが手掛けたそれは、白のジーンズと白のポロシャツ、そして白のウインドブレーカーという組み合わせだ。

ラルフ・ローレンは、2008年以降の全ての五輪でアメリカ選手団のユニフォームを製作してきた。悪趣味と批判されることもあったが、ほとんどの場合、デザインは想定の範囲内だった。冬季五輪はスイスの山小屋風の暖かそうな服、夏季五輪はアメリカの富裕世帯の若者が海でクルーザーに乗るときに着るような服というのが定番だ。

ユニフォームのデザインに求められてきたのは「アメリカらしさ」。ラルフ・ローレンにとって、それはアメリカ社会の伝統的な白人支配階級の文化にほかならない。

ラルフ・ローレンのユニフォームが毎度代わり映えがしないことは、あまり責められない。流行の影響を受けないポロシャツとボタンダウンシャツ、細身のデニムは、同社が最も熟知しているファッションだ。米オリンピック委員会とパラリンピック委員会は、同社に依頼する以上、こうしたデザインになることを予想しておくべきだろう。

16年の夏季五輪よりは多少マシ

つまり、責任はあくまでもオリンピック委員会とパラリンピック委員会にある。とっくの昔に、もっとアイデア豊富なデザイナーを抜擢するべきだった。とはいえラルフ・ローレンも、もう少し独創性を発揮できなかったのか。東京五輪はコロナ禍で1年延期されたから、時間の余裕もあったはずだ。

それでも、今年のデザインは16年夏季五輪に比べればいくらか改善が見られる。前回のユニフォームは、白のショートパンツ、ボタンダウンシャツ、そして(愛国カラーの)赤白青を使ったボートシューズ。しかもシャツには大ぶりのポロ・ラルフ・ローレンのロゴが刺繍されていた。

その点、今年はロゴがだいぶ小さくなっている。それにウインドブレーカーを採用したことで、鼻につく上流階級趣味が薄まり、スポーティーさが強まった。

こうした点は評価できる。そもそも赤白青の3色を使いつつ、愛国テイストの押し売りにならないデザインを考案するのは、至難の業だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フォトレジストに関する貿易管理変更ない=対中出荷停

ワールド

ハマスが2日に引き渡した遺体、人質のものではない=

ビジネス

日経平均は続伸、AI関連株が押し上げ 全般は手掛か

ワールド

韓国GDP、第3四半期は前期比+1.3% 速報値か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中