最新記事

パンデミック

コロナワクチンの特許権放棄、バイデン政権は中ロへの技術流出を警戒

2021年5月10日(月)16時36分
新型コロナウイルスのワクチン

米国のバイデン政権は、新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄に関連し、米国のバイオ技術が中国やロシアに流出しないよう対応策を検討している。写真はファイザーと独ビオンテックのワクチン。フランスのル・マンで1月撮影(2021年 ロイター/Stephane Mahe)

米国のバイデン政権は、新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄に関連し、米国のバイオ技術が中国やロシアに流出しないよう対応策を検討している。政府関係者や業界関係者が明らかにした。

バイデン大統領は5日、途上国を支援するため、世界貿易機関(WTO)が提案したワクチン特許権の一時放棄に向けた交渉を支持すると表明した。

欧米の医薬品業界は、特許権放棄に強く反対。米製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は7日、「ワクチン製造の経験がほとんどあるいは全くない企業は、われわれが生産を増やすために必要な原料を求める可能性が高く、全当事者の安全がリスクにさらされる」と主張した。

バイデン政権の高官は、人命を救うことが優先だとした上で「特許権の放棄が中国とロシアにどのような影響を及ぼすのか検証したい」と発言。

業界関係者によると、政権が製薬業界に配布した資料でも、知的財産を共有すれば、中国に対する米国の競争力が低下する恐れがあることを認めている。政権は、WTOの交渉でこうした問題に対処できるとしているが、具体的な方法は明示されていない。

関係筋によると、こうした問題への対応については、政権内の部局の間でも見解が割れている。交渉は数カ月かかるとみられている。

ホワイトハウス、米通商代表部(USTR)のコメントは取れていない。

ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンや米モデルナが開発した新型コロナワクチンには、メッセンジャーRNA(mRNA)という新しいバイオ技術が利用されており、この技術はワクチン以外の幅広い分野に応用可能とみられている。

米国の駐中国大使や商務長官を歴任したゲイリー・ロック氏は「ファイザーやモデルナは、何年も何年もかけて研究開発を進め、こうしたワクチンを開発した。中国、ロシア、インド、南アフリカなどは、根本的なノウハウを理解し、更なるワクチンの開発に利用したいと考えている」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中