最新記事

ドイツ

ソーセージにサヨナラ? ドイツが世界No.1ヴィーガン大国へ

2021年5月24日(月)16時00分
モーゲンスタン陽子

大豆、ビートルート、ニンジンなどの植物から作られているヴィーガン向けソーセージ REUTERS/Michele Tantussi

<ドイツの若者の間では菜食志向が強かったが、ついに2020年、肉消費量が過去最低を記録した>

ドイツ料理といえば肉とソーセージ......そのイメージが過去のものへと変わりつつある。新型コロナウイルスのパンデミックを経て、食生活はこの1年で大きく変わった。以前からドイツの若者の間では菜食志向が強かったが、ついに2020年、肉消費量が過去最低を記録し、さらに2019年より39%多くの肉代替製品(大豆など植物ベースの肉風製品)が生産されたとドイツ連邦統計局(Destatis)が14日に発表した

またドイツは、ヴィーガン(完全菜食主義、または動物性のものを完全に排除するライフスタイル)飲食料の新規商品発売の世界有数の市場でもある。ロンドンを本拠地とする私立市場調査会社ミンテルの2018年の調査によると、2017年7月から2018年6月に世界で導入されたすべてのヴィーガン飲食料のうち、新製品の15%はドイツからのもので、英国を抜いて世界トップとなった。

肉代替製品の生産が39%増加

肉代替製品についてのDestatisのデータは2019年から収集されているため、これが初めての前年比となる。2020年、ドイツ企業の肉代替製品生産量は2019年の60,400トン弱から83,700トン以上(+ 39%)と大幅に増加した。総価値は2億7,280万ユーロから3億7,490万ユーロに上昇した(+ 37%)。

肉製品の総価値は昨年、386億ユーロに達した。これは、401億ユーロという2019年の10年最高値から4%減少した。肉製品の総価値が肉代替製品の100倍以上あるものの、この変化は著しい。肉の消費はすでに長年減少傾向にあった。1987年には1世帯あたり1か月平均6.7キログラムの肉を消費した(肉類加工品は除く)が、2020年には約3分の1の2.3キログラムに減少した(1987年世帯平均2.5人に対し2020年は2人)。これは過去最低だ。豚肉の消費量が特に減少したという。肉の輸出入も2019年と比較してそれぞれ7.8%と6.5%減少した。

肉の消費減少の理由は?

パンデミック中の植物ベース食品の売上急増は、ドイツだけでなく世界中のトレンドだ。約1年前、ドイツやアメリカの食肉工場でクラスター感染が多く発生した。食肉加工工場で働く、おもに移民たちの置かれた劣悪な環境に注目が集まるとともに、「なぜ肉が安いのか」について人々の関心が高まった。北米では、食肉加工工場の一時閉鎖が相次ぎ、食品供給ルート確保への懸念も広がった。これらのことが相まって、欧米で多くの人が食生活を見直すきっかけになったようだ。

さらに、環境への配慮もある。とくに効果的なのは、牛肉食を減らすことだ。食用牛の飼育は食品産業のなかで最も炭素を多く消費し、農業排出の60%以上を占めるといわれる。食品1kgあたりの平均温室効果ガス排出量(kgCO2-eq)を比較すると、約60である牛肉はすべての食品中で圧倒的に多く、これは豚肉や鳥肉の10倍前後だ。チーズや養殖エビ、植物性ではコーヒーなども高めだが、2位のラム肉でさえ半数以下の24.50であることを考えると、牛肉食を減らすことがかなり環境にプラスになることがわかる。

このような事実について教育を受けている現在のティーンエイジャーやミレニアル世代は特に環境に対する意識が高い。ドイツ連邦食糧・農業省BMEL の2020年版レポートによると、調査対象者の39%がパンデミック中に農業を重要視するようになり、さらに青年や若年層になると47%に上る。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ハマスに60日間のガザ停戦「最終提案」

ビジネス

米ハーシー、菓子の合成着色料を27年末までに使用停

ビジネス

メキシコへの送金額、5月は前年比-4.6% 2カ月

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、ハイテク株安やトランプ関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中