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コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?-50か国ランキング(2021年5月更新版)

2021年5月19日(水)11時41分
高山武士(ニッセイ基礎研究所)

低評価の国は、スペインや英国など欧州が目立つ。これは、昨年春の感染拡大初期において、いち早く新型コロナが流行してしまったこと、それにより厳しいロックダウンをせざるを得なかったことなどが大きく影響していると見られる。また、ペルーやアルゼンチン、コロンビアといった南米でも「コロナ被害」と「経済被害」の双方の点数が低い国が散見される。

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(図表1)各国のコロナ対応の評価(2020年)

【2021年の結果】

21年以降、直近までのデータを反映させた結果は図表2の通りである。上位国は中国・ニュージーランド、ノルウェーとなった。

20年の結果で上位国となった台湾や韓国は感染拡大率が高めであることから順位を落としている。ただし、累積の感染者数が多いわけではないため、感染者数が少ない状況が続けばコロナ被害も小さく抑制できると見られる。

下位国では、20年でも順位が低かった南米や欧州の国が集中している。欧州ではハンガリーやチェコといった東欧の国で順位を落としている点も特徴と言える。

21年以降の新型コロナウイルスをめぐる動向では、変異株の流行やワクチン接種の進展が注目されている。

変異株の流行では、欧州などを中心に昨年末から今年かけて封じ込め政策の強化を余儀なくされた国が多く、21年の「GDP損失」を拡大させる要因になったと見られる。インドは、最近の感染拡大の中心地となっており、「コロナ被害」と封じ込め政策による「GDP損失」が拡大しているが、その一因として、ウイルスの変異による感染力強化や抗体の働きの低下といった影響が指摘されている。日本でも年明け以降、変異株の感染例が増えている。足もとでは一部地域に対して緊急事態宣言やまん延防止等重点措置も適用されているが、なかなか感染拡大は収束せず「コロナ被害」が相対的に大きくなっていることから、21年の順位は現時点で29位と20年の5位から大きく落ちこんでいる。

(図表2)各国のコロナ対応の評価(2021年)
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ワクチンの普及に関しては多くの国で接種が開始されており、早い国では(接種対象となる)成人の大部分で接種が完了した国もある。例えばイスラエルではワクチン接種が進んだことで、新型コロナの感染者数も抑制されている状況にある(図表3)。

その他の国でも、欧米の主要先進国をはじめとして年内にはワクチン接種がかなり進展する見込みである(図表4)。今後は変異株の脅威が高まるなかで、ワクチン普及によって感染者数が抑制されていくのか、それにより経済回復がどの程度進むのかが注目される状況と言えるだろう。

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[執筆者]
高山 武士 (たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所
経済研究部准主任研究員


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