最新記事

テクノロジー

加速するグリーン投資は「革命」か「バブル」か

A GREENTECH BUBBLE?

2021年4月2日(金)11時19分
ウィリアム・ジェーンウェイ(プライベート・エクイティー投資家、ケンブリッジ大学経済学客員講師)
テスラ車とEV充電スポット

テスラ株急騰でグリー ンテック分野がバブル 状態に沸いている今の うちに、EV充電スポッ トなどのインフラ整備 をすることが重要だ MICHELE TANTUSSIーREUTERS

<テスラ株が10倍に値上がりするなど脱炭素マネーは膨張を続けているが、これを「バブル」と懸念する声は正しいのか>

米EV(電気自動車)大手テスラの株価は、昨年3月から今年1月までに実に10倍に跳ね上がり、創業者でCEOのイーロン・マスクはまさにグリーン・イノベーションの顔となった。

「テスラ現象」はEV業界全体に波及。技術的にも未知数で、収益もろくに上げていない新エネルギー関連の新興企業も、おこぼれにあずかっている。

こうした状況を見て、及び腰の政府を尻目に起業家と民間投資家の主導で「グリーン革命」が始まったと楽観視する向きもある。一方で、「グリーンテック」(EVや再生可能エネルギー関連の新技術。クリーンテックとも呼ばれる)への投資ブームはバブルの段階に入っていると、警告を発するアナリストもいる。

確かに市場の過熱は危うさを伴う。IT関連株への初期の投資熱が1990年代末の「ドットコム・バブル」を招いたように、いまグリーンテックに流入している資金もいつ引き揚げられるか保証はない。

各国の中央銀行がインフレ率を下回る政策金利を設定するようになって10年になる。そもそもインフレ率自体、記録的な低水準だ。結果、安全資産の利回りは実質的にマイナスとなり、リスクが大きい代わりにリターンも大きい商品に投資家が群がるようになった。

グリーンテック株が注目される前には、「ユニコーンバブル」なるものがあった。次のGAFAやネットフリックスに化けることを期待して、時価総額10億ドルを超えるIT関連の新興企業の未上場株をヘッジファンドなどが買いまくったのだ。

FRB(米連邦準備理事会)はコロナ禍対策として「最大限の雇用と一定期間2%を超えるインフレ率」を達成するまでは金利を据え置く方針だ。だがアメリカではジョー・バイデン大統領率いる新政権下でワクチン接種が急ピッチで進んでいる。感染拡大が収まれば資本市場も正常化に向かうだろう。

となると、問題は「グリーンバブルははじけるか」ではなく(どんなバブルもいずれははじける)、はじけた段階でグリーン革命実現に向けた準備が整っているかだ。いま流れ込んでいる資金は無駄になるのか、革命を新常態にするためのインフラ整備に活用されるのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、NATO会議欠席へ ウ和平交渉重大局面

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 運

ワールド

感謝祭当日オンライン売上高約64億ドル、AI活用急
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中