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加速するグリーン投資は「革命」か「バブル」か

A GREENTECH BUBBLE?

2021年4月2日(金)11時19分
ウィリアム・ジェーンウェイ(プライベート・エクイティー投資家、ケンブリッジ大学経済学客員講師)

エネルギーの供給と消費を根本的に変えるには、巨額の公共投資と税制や規制強化によるテコ入れなど政府の主導が欠かせない。20世紀後半のデジタル革命の歴史を振り返れば、それは明らかだ。

技術革命において、政府はリスクの高い計画に多額の税金をつぎ込むことを国民に納得させるため、政治的な理由付けをしなければならない(例えば宇宙開発なら「冷戦に勝利するため」など)。その上で基礎研究に資金を提供する必要がある。グリーン革命も同様だ。将来的なリターンは不確実で、民間部門が投資を控えるような研究開発には、まず政府が資金を提供し、民間投資を呼び込む下地を整えることが必須だ。

新技術が成熟段階に入ったら、政府が最初の顧客になり市場をつくり出す。製品生産の継続で学習が進み、製品単価が低減すれば、低コストで信頼性の高い生産体制が実現する。

最後が投機家の登場だ。新たなテクノロジーの潜在的革新性を見定めた彼らが、大規模展開などに求められるインフラに資金を提供し、ニューエコノミーへの期待が原動力となって生産的なバブルが出現する。

こうしたパターンの一端は前時代の産業革命に見て取れる。18世紀のイギリスでは、軍の銃器需要増加で(大量生産や分業化によって)生産性が上昇し、英中部バーミンガムは第1次産業革命の舞台になった。英議会が鉄道開発者らに土地収用権限や有限責任制を付与したことがきっかけで、1840年代には鉄道投資熱が高まった。

グリーン革命に中国が参入

アメリカでも、政府の保証や補助金が運河・鉄道網の建設を促進した。そしてイギリスの場合と同じく、政府の後に投機家が続いた。

現代の気候変動で迫られている技術革命の規模と範囲は、冷戦さえも上回る。だが、対応の在り方は大違いだ。アメリカは長らく、共和党政治家らの現実否認のせいで麻痺状態だった。自滅的な姿勢は、ドナルド・トランプ前大統領が決定した地球温暖化に関するパリ協定離脱で頂点に達した。

アメリカ不在のなか、グリーン革命をわがものにしようとしたのが中国だ。世界最大級のグリーンテック研究開発プログラムに資金提供し、風力発電やソーラーパネル生産で支配的地位を確保した。とはいえ中国のリーダーシップは、石炭依存や国内外での石炭火力発電所建設の継続によって損なわれている。

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