最新記事

中国

米中アラスカ会談──露わになった習近平の対米戦略

2021年3月22日(月)15時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

それは米中の力が拮抗してきたことを意味し、後述するように習近平が周到に作り上げた作戦であることが読み取れるので、楊潔チと王毅の二度にわたる反論の趣旨(大意)を、順不同でいくつか拾い上げて略記する。

楊潔チ:

1.アメリカには上から目線で偉そうに中国にものを言う資格はない。中国はその手には乗らない。中国と交渉したければ、相互尊重の基礎を守れ。

2.中国の首を絞めようとすれば、結局は自分の首を絞めることになるということを歴史が証明している。われわれが西洋人から受けた苦しみは少なかったとでも言うのか?われわれが外国から包囲された期間は、これでも短かったとでも言うのか?何をされようと中国は立ち直ってきた。

3.中国共産党の指導と中国政治制度は中国人民の支持を得ている。中国の社会制度を改変しようとする如何なる試みも徒労に終わる。

4.習近平は「米中は衝突せず、対抗せず、互いに尊重し、ウインウインとなるべき協力していこうと」と言い、バイデン大統領も電話会談でそのことに賛同した。このたびの中米ハイレベル戦略対話(=外交トップ会談)は、習近平とバイデンが約束した電話会談の内容を具現化するために挙行されたものだ。 

5.アメリカにはアメリカの民主があるだろうが、中国には中国の民主がある。中国は国連を中心とした国際システムの中で全人類共通の価値を追い求めているのであり、アメリカが決める価値観が国際的な価値観だと思うな。アメリカの言い分が国際世論だとも思うな(筆者注:韓国がアメリカとの「2+2」会談で中国を名指しするのを嫌がったことも指しているのだろう)。アメリカが決めた秩序が国際秩序ではなく、国連が決めた秩序が国際秩序だ。アメリカが決めたルールが世界のルールだとは思わない国が地球上には数多くある。

6.アメリカは常に武力に訴えて世界各地で戦争を引き起こし世界に不安と混乱をもたらしている。世界の秩序を乱しているのはアメリカだ。人権問題に関してもアメリカが抱えている人種差別問題はここ数年の話ではない。アメリカが解決しなければならないのは自国の人権問題であり、先ずは自国の問題を先に解決しろ。自国内の人権問題をごまかすために中国の人権問題に対して目を向けさせ四の五の言うのはお門違いだ。自国をきちんと管理してからものを言え。

7.台湾、香港、新疆(ウイグル)は分割できない中国の領土であり、中国の内政に干渉するようなことは絶対に許さない。

王毅:

1.客が遠路アラスカまでやって来るその前の日に、香港関係者に制裁を加えるというのは、客を迎える礼儀に反するのではないか。

2.客に会う前に他の国々と申し合わせて中国を威嚇しようとしたのなら、計算間違いだ。そのようなことで譲歩するような中国ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中