最新記事

中国

米中アラスカ会談──露わになった習近平の対米戦略

2021年3月22日(月)15時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

3.あなた方が訪問した国々が中国に脅威を感じているとおっしゃるが、果たして彼らが脅威を感じているのか、それともアメリカの主観的な憶測なのかわからない。少なくとも中国と意見交換する前に中国にレッテルを張るのは公正だとは思わない。

会談後、米中ともに「満足」と発表

会談終了後、米中はそれぞれ記者発表したが、双方とも「一致しない点はあるものの、率直に意見交換できたことは良かった」という趣旨のことを述べている。

中国側からあそこまでの明け透けな反論を受けながら、アメリカ側はなぜ「率直でよかった」と言ったのだろうか。

それは楊潔チ発言ので書いたように、何と言ってもバイデンが習近平と電話会談をした時に「米中は衝突せず、対抗せず、互いに相手を尊重する」と誓っているからだろう。このことは2月12日付けのコラム<米中首脳電話会談を読み解く――なぜ「とっておきの」春節大晦日に?>に書いた通りだ。また2月8日のコラム<バイデン政権の本音か? 米中電話会談、「一つの中国」原則に関する米中発表の食い違い>に書いたように、ブリンケン自身、楊潔チとの電話会談では「一つの中国」原則を守ると誓っている。つまり、台湾問題には口出しをしないという意味だ。

二人とも中国側に言質(げんち)をとられているので、非公開の場所ではブリンケンは譲歩しただろうことが考えられる。

予めCCTVが崔天凱・駐米大使を取材

アメリカが香港関係者24人に対して制裁を発表したのはアメリカ時間の3月16日のことだ。

それを受けて3月17日に中国の中央テレビ局CCTVが崔天凱・駐米大使を取材している。普段は穏やかな崔天凱が、ここでは色を成してアメリカを非難し、楊潔チと王毅の反論を予感させる厳しい抗議と「中国をバカにするのではない」という趣旨の発言までしている。まるでアラスカ会談の序奏曲かと思わせる組み合わせだ。

ということは中国の外交トップ3人が共同して同じ勢いと方向性で動いているので、これは明らかに習近平の指示の下で全ては仕組まれていると考えるべきだろう。

「これまでの中国とは思うなよ」という、習近平の対米姿勢が如実に表れているということだ。

「中国共産党建党100周年」と「辛丑(しんちゅう)条約120周年」

その証拠に、3月19日の中国共産党機関紙「人民日報」の微博(weibo)に「二つの辛丑年の対比」というタイトルで1901年の北京議定書(辛丑条約)と今年2021年の中国共産党建党100周年における米中アラスカ会議の写真が対比して掲載された

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中