最新記事

外交

日米豪印クアッドはワクチン外交で中国に反転攻勢へ

2021年3月16日(火)17時30分
マイケル・グリーン(戦略国際問題研究所〔CSIS〕上級副所長)

この地域には、アメリカ抜きの貿易協定が2つ存在している。RCEP(東アジア地域包括的経済連携)とCPTPP(包括的かつ先進的TPP協定)だ。CPTPPは、トランプ前政権がTPPから離脱した後、残りの11カ国が結んだ協定である。中国は既にRCEPのメンバーで、習近平(シー・チンピン)国家主席はCPTPP加盟を目指す意向も示している。

このような状況で、バイデン政権はTPP復帰の意思を明確に示すべきだ。そうしなければ、この地域の国々は中国の圧力に押しつぶされたり、巨大な中国経済に吸い寄せられたりしかねない。

日米豪印は、共同歩調を取る国を増やす方法も考える必要がある。最も有力なのは、イギリス、フランス、カナダ、韓国と合同海上軍事演習を行うというものだろう。

しかし、バイデン政権は今回、米政府の信頼性が低下し、選択肢も限られているなかで、手持ちのカードで最大限の効果を引き出したと言える。

19世紀半ば、米海軍のペリー提督は、やがて英米、そしてもしかすると日本の海軍により太平洋の秩序が守られる時代が来ると語り、人々を驚かせた。豪印の海軍を英海軍の後継者と考えれば、この予言が当たったことになる。

しかし、いま天国のペリーは、自分の予想どおりになったことにほほ笑みつつも、中国海軍の台頭に表情を曇らせていることだろう。

4カ国首脳協議は目覚ましい成果を上げた。バイデン政権がアジアの戦略的状況をリセットすることを本気で目指すのなら、東南アジア諸国へのワクチン支援だけで満足してはならないが。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、インド大手銀行に2400億円出資 約

ビジネス

米国は最大雇用に近い、経済と労働市場底堅い=クーグ

ビジネス

米関税がインフレと景気減速招く可能性、難しい決断=

ビジネス

中国製品への80%関税は「正しい」、市場開放すべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中