最新記事

英連邦

メーガンの爆弾発言は、女王の国でも白人の国しか視聴できない?

Meghan's Racism Claims Not Aired in 12 Countries Where Queen is Sovereign

2021年3月10日(水)16時11分
ジャック・ロイストン
イギリスのエリザベス二世

イギリスをはじめ16カ国の国家元首を務めるエリザベス二世 John Stillwell/Pool- REUTERS

<王室の人種差別を告発したメーガン妃の番組が、英女王を君主に戴く英連邦王国の有色人種の国々では放映されないことがわかった。背景には一部の女王離れがあるのかもしれない>

英ヘンリー王子とメーガン妃が王室による人種差別を訴えたインタビュー番組は、エリザベス2世を元首たる国王とする英連邦王国のうち12カ国では放送されない。

1995年のダイアナ妃のインタビュー以来、王室のインタビューとして最も注目を浴びたこの番組で、ヘンリー王子とメーガン妃は司会のオプラ・ウィンフリーに、王室のあるメンバーが生まれてくる2人の子供の肌の色の黒さを懸念する発言をした、と語った。

この驚くべき発言は、イギリスで人種差別に関する激しい議論を引き起こした。調査を要求する声はもちろん、君主制の廃止を求める声さえあがっている。

ゴールデンタイムに放映されたこの2時間の特別番組は、5つの大陸にまたがる22のテレビ放送網が放映権を獲得しているが、女王が国家元首を務めるカリブ海や大洋州の英連邦王国12カ国のテレビ局には放映権がない。

具体的には、カリブ海のアンティグア、バーブーダ、バルバドス、バハマ、ベリーズ、グレナダ、ジャマイカ、セントルシア、セントクリストファー・ネイビス、セントビンセント・グレナディーン諸島。そして大洋州のパプアニューギニアとソロモン諸島だ。

女王の国から脱却

夫妻が主張したこれらの深刻な問題が、英連邦王国の一部、とくにエリザベス女王を国家元首とする体制の廃止が議論されている国々に与える影響は大きい。

バルバドスは昨年9月、君主制からの脱却を宣言し、サンドラ・メイソン総督は「植民地支配の過去を完全に手放す時がきた」と宣言した。

2012年、当時のジャマイカの首相ポルティア・シンプソン・ミラーは、同国を共和国にすると述べた。ただし、今のところそれはまだ実現していない。

エリザベス女王を君主とする国は現在16カ国だが、そのうちインタビューの放映権を買ったのはイギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアのテレビ局で、いずれも白人が多数を占める国々だ。

ウォールストリート・ジャーナル紙によると、カリブ海や大洋州の一部の国のテレビ局が放映権を獲得していない理由は明らかではないが、オプラ・ウィンフリーの制作会社ハーポ・プロダクションズはこの番組の放映権を700~900万ドルでCBSに売却した。ガーディアン紙によると、イギリスではITVニュースが140万ドルで放映権を獲得した。

理由が何であれ、放映権が限定されているということは、イギリスの旧植民地という歴史的経緯からエリザベス女王を国家元首としたことの是非が議論されている国の国民が、このインタビューを視聴できないことを意味する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国シャオミ、初のEV販売台数が予想の3─5倍に=

ワールド

イスラエル北部の警報サイレンは誤作動、軍が発表

ワールド

イスファハン州内の核施設に被害なし=イラン国営テレ

ワールド

情報BOX:イランはどこまで核兵器製造に近づいたか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中