最新記事

感染症対策

コロナワクチン副反応の4割が深刻な影響、女性は男性の2倍 スイス当局の最新レポート

2021年2月12日(金)18時00分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

医療現場 ワクチン接種希望者ばかりではない

ワクチン接種は、とりわけ医療現場で働く人たちには推奨される。しかし、医療現場にもワクチンに懐疑的な人たちはいる。スイスの医療従事者向け情報サイトのメドインサイドは、ワクチン接種が始まる前、(1)医師、(2)看護スタッフ、(3)医療助手(患者情報や医療品の管理ほか採血や注射、X線撮影などを行う)、医療セラピスト、病院総務従事者の計約700人((1)(2)(3)の比は3分の1ずつ)にアンケートを行った。その結果、「すぐに接種する」の回答は30%強で、「すぐに接種しない」の回答は55%近かった。

またスイス放送協会によると、ワクチン接種開始前、250人の看護スタッフが働くある高齢者施設では、ワクチンを接種すると決めているスタッフは20%しかいなかったという。

メドインサイドは、1月、心臓外科医、集中治療室スタッフ、内視鏡検査専門家、精神科医、高齢者施設スタッフ、スイスメディックのスタッフなど200人にもアンケートを実施した。もしもワクチン接種が義務になったとしたら、それは辞職する理由になり得ると答えた人は53%にも上った。

だがメドインサイドでは、接種に対する考え方にはばらつきがあり、少なくともチューリヒ州など一部の地域では医療従事者は接種にとても積極的だとしている。これについて精神分析家のベーター・シュナイダー氏は、接種を拒絶する人たちは1日で接種賛成派に変わることはないとしつつ、ワクチン接種が現実的になればなるほど受けようという気分になるだろうとコメントしている。

メドインサイドは、医療現場でのインフルエンザの予防接種率が低いことにもふれている。その理由として以下を挙げている。


●インフルエンザワクチンの有効性は、年によっては50%未満である。
●病院のスタッフは、インフルエンザの予防に関しては、手指消毒やマスクの着用などほかの対策がより効果的だと考えている。
●外部者が看護スタッフの間でインフルエンザの予防接種率が低いことを指摘し、接種すべきだと言うことで、多くの看護スタッフはプレッシャーを感じ抵抗感を覚えている。
●自分は強くて健康な体をもっていると信じている。
●自分の体について決定を下す権利は自分にある。
●看護スタッフが予防接種を受けたら、その看護スタッフへの信頼が薄らぐのではないかと心配だ。

しかし、新型コロナウイルスはインフルエンザと異なる点がいろいろある。有効性が格段に高い新型コロナウイルスのワクチン接種は、スイスの医療現場でどこまで広まるだろうか。


スイス在住ジャーナリスト岩澤里美[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中