最新記事

中国

イギリスのCPTPP加盟申請は中国に痛手か?

2021年2月15日(月)11時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

次に、中国の経済力を考えれば、どの国だろうと中国との取引を軽々しく放棄したりはしないでしょう。バイデンが大統領になってから、米中パワーゲームの基調は変えていませんが、中国に対する対抗の仕方に関しては少し変化しています。やっぱり中国の経済力と市場の大きさを考慮せざるを得ないのでしょう。まあ、ひとことで言うならば、CPTPPだろうがRCEPだろうが、中国と離れてビジネス展開をするということはできないということです。アメリカも日本もイギリスも、結局は自分の利益を考えて選択していきますからね(孫教授の回答はここまで)。

たしかにイギリスのジョンソン首相は今年1月4日、「軽率な中国嫌悪」に警鐘を鳴らしている。中国との交易の余地を残したいのだろう。

一方、李克強首相は2月4日、イギリスの「破氷者」と呼ばれる48社の親中企業グループ倶楽部とリモートで会談した。1000人ほどが参加したという。

日本でも自民党の二階幹事長が数百人や数千人から成る企業団を率いて北京詣でをし、習近平国家主席を喜ばせたことが何度もある。どの国にも、こういった「超親中」の政財界人がいるものだ。実に救いがたい。イギリスのCPTPP加盟申請を喜んでなどいる場合ではない。

なお香港人をイギリスに移民させてパスポートを発行する政策(BNO)に関しては、よくよく見るとBNOでイギリスに移民するには500万香港ドルかかるという試算があるようだ。日本円で6,751万円の財産を持っていないと移民資格が与えられない。だとすれば貧乏な民主活動家に移民の余地はないことになる。つまりBNO政策は、本当は民主活動家を救うためではなかったことになる。本日の発表でイギリスの昨年のGDP成長率はマイナス9.9%となったとのこと。香港からの移民に関しても、少しでも稼ごうかと思っているイギリス政府の意図が透けて見える。

実は、中国のネットに「イギリスがCPTPPに加盟申請したことに興奮しているのは日本だけだ」という論評があり、不愉快だったので中国側の受け止め方を考察してみたのだが、残念ながら、さらに暗澹たる気持ちになっただけかもしれない。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

Endo_Tahara_book.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏一族企業のステーブルコイン、アブダビMG

ワールド

EU、対米貿易関係改善へ500億ユーロの輸入増も─

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで14人負傷、ロシアの攻

ビジネス

アマゾン、第1四半期はクラウド部門売上高さえず 株
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中