最新記事

中東

バイデン政権の核合意復帰をめぐり一触即発のイランとイスラエル

Iran Threatens to Take Out Tel Aviv if Israel Follows Through With New Military Plans.

2021年1月28日(木)16時16分
トム・オコナー

イラン革命防衛隊が今年1月16日に実施した軍事演習 theiranporoject.com

<すぐには核合意に復帰しそうにないアメリカに苛立つイラン、イランの核武装を警戒するイスラエル、三つ巴の駆け引きはどちらに転んでもおかしくない>

イスラエル軍のトップが新たな作戦計画に言及してイランを威嚇した翌日、イランは計画が実行されたら、地中海に臨むイスラエルの2つの都市を壊滅すると宣言した。

イスラエル軍のアビブ・コチャビ参謀本部長は1月26日、テルアビブ大学国家安全保障研究所のスタッフに向けた演説で、ジョー・バイデン米大統領が2015年に米英など6カ国とイランが締結した核合意に復帰するか、制裁緩和などの措置を取ることは「作戦上、また戦略上まずい」選択だと語った。

イランは一貫して否定しているが、イスラエルはイランが核武装を目指しているとみており、アメリカが制裁を緩めれば、イランの核開発が加速すると、コチャビは警告した。

コチャビによれば、イランは配下の武装組織を通じて中東全域で工作活動を展開している。これを抑えるためにイスラエル軍は既にレバノンとシリアの親イラン派組織の拠点に空爆を実施しているが、アメリカの政権交代に伴う情勢の変化を分析し、新たな作戦計画が必要だと判断したという。

「既存の計画に加えて、新たに複数の作戦計画を準備するようわが軍に命じた。今後1年を目処に計画をまとめる。もちろん実行を決定するのは政府だが、即座に実行できるよう準備しておかなければならない」

ブラフだと反発

これにすぐさま反応したのはイラン軍のアボルファズル・シェカチ報道官だ。イランの半国営通信社タスニムの1月27日の報道によれば、シェカチはコチャビの発言を「心理戦」にすぎないと切って捨てつつ、こう警告した。

「(イスラエルが)ほんのわずかでも過ちを犯せば、われわれは可及的速やかに(イスラエルの主要都市)ハイファとテルアビブを完全に破壊する」

イランのハサン・ロウハニ大統領の首席補佐官を務めるマフムード・バエジも1月27日、イスラエルにはイランを攻撃する「計画もなければ、それを実行する能力もない」と断言した。

「口先ばかりで心理戦を仕掛けようとするシオニスト政権の高官がもてあそぶ脅し文句など、わが国民も中東の人々も聞き飽きている」

最近イラン軍と革命防衛隊の複数の部門が立て続けに実施した演習が示すように、「われわれは侵略や戦争する気はないが、(他国の攻撃に対しては)祖国を全力で防衛する」と、バエジは力を込めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中