最新記事

アメリカ政治

自らの恩赦見送ったトランプ、今後待ち受ける民事・刑事責任は?

2021年1月25日(月)09時52分

トランプ前米大統領は任期最終日に多数の恩赦を与えたが、自身や子供たち、私的な顧問弁護士のジュリアーニ元ニューヨーク市長は含めなかった。写真は20日、メリーランド州の空軍基地で演説するトランプ氏(2021年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ前米大統領は任期最終日に多数の恩赦を与えたが、自身や子供たち、私的な顧問弁護士のジュリアーニ元ニューヨーク市長は含めなかった。トランプ氏の側近らは、トランプ氏が自分に恩赦を与えるという異例の措置について、密かに議論したと話していた。

今回の最終的な決断が、退任して一般人に戻ったトランプ氏に今後、問われる可能性のある民事的、刑事的責任に対し、どのように影響し得るのかまとめた。

トランプ氏決断の理由、考えられる事柄

大統領恩赦で可能になることは、とても多いわけではない。連邦機関である司法省の訴追は停止され得るが、州レベルの訴追は可能だ。ニューヨーク州マンハッタン地区検察のサイラス・バンス検事が手掛けているトランプ氏の事業に関する脱税疑惑などへの刑事捜査は、なお続く。

バンス氏は、今のところだれも刑事訴追していない。トランプ氏は、この捜査が政治的動機によると主張してきた。

法律事務所バックリーの弁護士で、以前、マンハッタン地区検察でバンス氏の補佐だったダニエル・アロンソ氏の見立てでは、トランプ氏が自己恩赦していたら、州レベルでの訴追を求める声が高まるだけだったという。

ロヨラ・ロー・スクールのジェシカ・レビンソン教授によると、自己恩赦していたら、トランプ氏の支持者たちによる今月6日の連邦議事堂襲撃での死者遺族などが、民事訴訟を起こす動きに油を注いでいた可能性もある。事件の直前にトランプ氏はホワイトハウス近くでの集会で群衆を繰り返しあおっていた。

レビンソン氏は、少なくとも罪を認めるかという意味で、トランプ氏の自分や家族への恩赦は、ほとんど「挑発」行為になると指摘。「来て捕まえてみろ」と言っていることになり、その通りに訴訟と捜査を加速させていたとみる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中