最新記事

アメリカ政治

自らの恩赦見送ったトランプ、今後待ち受ける民事・刑事責任は?

2021年1月25日(月)09時52分

自己恩赦が裁判所で審理された場合、法廷が支持するかについては、学者たちはかなり懐疑的だ。「だれも自分の件を自分で裁いてはならない」との基本原則に背くとみる専門家は多い。

自己恩赦していたら、上院の共和党議員も怒っていたかもしれない。下院はトランプ氏の演説が議事堂襲撃をあおったとして弾劾訴追を可決しており、上院では間もなく弾劾裁判が開かれるからだ。弾劾裁判の結果によっては、トランプ氏は将来公職に就けなくなる。

ジュリアーニ氏の恩赦なら、トランプ氏の助けになっていたか

法律専門家によると、助けになっていた可能性も高いが、判断は難しい。

ジュリアーニ氏はトランプ氏のために大統領選の有力候補だったバイデン氏やその子息のスキャンダルを探し、トランプ氏の代理人としてウクライナ疑惑に関わった。トランプ氏のこうした対応は、2019年12月の下院での弾劾訴追につながった。だが、20年2月に共和党が多数派だった上院で開かれた弾劾裁判では、無罪とされた。

ロイターが入手した大陪審召喚状によると、ニューヨークの連邦検察は19年11月、犯罪捜査の一環としてジュリアーニ氏への支払い記録の提出を求めていた。召喚状によると、検察が捜査の対象としたのは資金洗浄、通信不正行為、選挙資金の法規違反、偽証、司法妨害、外国代理人登録法の違反だった。

ジュリアーニ氏は、全て否定している。

ジュリアーニ氏への捜査の範囲や程度は不明で、現状で同氏は訴追されていない。同氏がトランプ氏について、検察にとって価値があると思うようなことを知っているのかも明らかにされていない。

ただ、元連邦検事で現在はベンジャミン・N・カードーゾ・ロースクールの教授であるジェシカ・ロス氏によると、ジュリアーニ氏に恩赦が与えられなかったことで、同氏は訴追された場合には検察に協力し、トランプ氏の行為をほのめかす可能性が高くなっているという。「恩赦の可能性がなければ、有罪と服役の可能性は現実味を増すわけで、これが『良きに計らってもらう』ために検察に協力する動機になる」としている。

ロヨラのレビンソン氏は、バイデン氏の大統領選勝利を無効にするためにジュリアーニ氏がトランプ氏の代理で起こした数多くの訴訟がことごとく負けたことで、同氏は恩赦を与えないことを決めた可能性もあるとみている。

密かに自己恩赦することも可能だったか

元検事のアロンソ氏によると、密かに自己恩赦することは可能だ。大統領恩赦は通常、公表される。しかし、合衆国憲法が公表を義務づけているわけではなく、トランプ氏がやろうと思えば、家族や側近、自身に対してさえも予備的な恩赦を密かに出せていたという。

一方で、大統領記録法は大統領決定の文書化を定めているが、実際にそれを強制する仕組みは同法には定められていない。アロンソ氏によると、恩赦が密かに行われていた場合、それが明らかになるのは、恩赦の対象になった人物が最終的に連邦犯罪で訴追され、その弁護のために恩赦されていることを申し出る以外にないかもしれないという。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・議会突入の「戦犯」は誰なのか? トランプと一族、取り巻きたちの全内幕
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ワールド

中国、米国産大豆追加購入の可能性低下も 関税違憲判

ビジネス

トランプ関税違憲判決、米エネ企業のコスト軽減 取引

ワールド

米USTR、新たな301条調査開始へ 主要国の大半
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 5
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中