最新記事

動物

地上最凶の動物「ラーテル」の正体 あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も?

2021年1月23日(土)17時25分
ジョン・ロイド(BBCプロデューサー)、 ジョン・ミッチンソン(作家、リサーチャー) *東洋経済オンラインからの転載

相手の急所を狙って攻撃するラーテルも

伝説によると、相手の急所を狙って攻撃するラーテルもいるそうだ。このことが最初に報告されたのは、1947年。おとなのバッファローにラーテルが襲いかかり、その睾丸(こうがん)を食いちぎるところが目撃されたらしい。さらに、ヌーやウォーターバックやクーズーやシマウマや人間までもが、ラーテルに去勢されたといわれている。

capensis.png2009年放送の『トップ・ギア』(イギリスBBC の自動車番組)のボツワナ特集で、ジェレミー・クラークソンはこう語った。「ラーテルが人間を殺すのは、人肉を食べるためじゃないんだな。やつらは人間の睾丸を引きちぎるんだよ」

パキスタンでは、ラーテルは「ビジ」と呼ばれ、死体を墓から持ち去る動物といわれている。この類いの身の毛もよだつ恐ろしい評判が広まっているためか、イラク戦争中、現地に駐屯していたイギリス軍部隊が、地元民を恐怖に陥れようと、おびただしい数の「クマに似た人喰くい動物」を町に放ったと非難された。

結局、その動物はラーテルだったと判明したが、町に殺到したのは湿地帯に洪水が起きたからだった。

Q コウモリは目が見えないって本当?


超音波で交信し合っていると習ったはずだが......?

しかし、コウモリは目が見えない、という事実はまったくない。

世界中に生息する1100種あまりのコウモリのうち、目が見えない種は1つとしてないし、実際のところ、非常によく見えるコウモリのほうが多い。

エコーロケーション(反響定位)つまり「音波」だけを使って動き回るコウモリには目が必要ないというのは、完全にでたらめである。

フルーツコウモリ(別名オオコウモリ)は、エコーロケーション機能をまったく使わない。大きな両目でもって進路を見極め、食べ物――もちろんフルーツ――を見つける。

エコーロケーションは、動き回らない食べ物を見つけるにはほとんどなんの役にも立たない。そのかわり、この種のコウモリにはフルーツロケーションに活用できる鋭い嗅覚も備わっている。

ナミチスイコウモリは、哺乳類の血液を常食とする唯一のコウモリだ。盲目どころか、この吸血コウモリは120メートル離れた牛を――深夜、真っ暗闇の中で――難なく見つけることができる。

newsweek_20210121_181055.jpg

獲物を捕まえるために音波を使うココウモリの仲間も優れた暗視能力で「見ている」。 © Matt Reinbold - (CC BY 2.0)

イギリスに生息するコウモリはすべて、おもに虫を食べるココウモリの仲間だ。この種のコウモリこそ、獲物をつかまえるために音波を使う。

ところが、このココウモリでさえ(はるかに小さい)目を使って障害物をよけたり、目印を見つけたり、飛行高度を把握するのだ。ココウモリには、優れた暗視能力がある。ただし、夜行性なので見るものすべてがモノクロだ。ちなみに、フルーツコウモリは昼行性なのでさまざまな色を見分けられる。

中米や南米には、「魚釣りをするコウモリ」が何種か生息している。そのうちの1つ、ウオクイコウモリは鋭い眼力と大きな足を使って小魚を水中からすくい上げる。この種のコウモリは、ほとんど誰にでも識別できる。翼幅が66センチもあるうえに、洞窟や岩壁などにある棲み処がなんとも不快な臭いを発しているからだ。

コウモリをおいしい食材だという人はあまりいないが、グアム島のチャモロ族の人々は結婚式などの特別な日に、大きなフルーツコウモリ(別名「空飛ぶキツネ」)をココナッツミルクで煮込み、翼も毛皮もなにもかも食べるのだという。

彼らのあいだには「ALS・パーキンソン認知症症候群」(訳注:運動神経系が少しずつ老化して使いにくくなっていく病気)という神経学的疾患が多発しているが、フルーツコウモリが常食としているソテツの実に含まれる神経毒が原因ではないかと見る研究者たちもいる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和

ワールド

米政権、スペースXとの契約見直し トランプ・マスク

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中