最新記事

アメリカ政治

未曽有の危機で船出のバイデン政権 傷ついた「アメリカの魂」を再生できるか

2021年1月21日(木)10時01分

ジョー・バイデン氏は大統領選の間、「米国の魂」のために戦うと約束してきた。写真はホワイトハウスで閣僚の宣誓式に出席したバイデン氏(2021年 ロイター/Tom Brenner)

ジョー・バイデン氏は大統領選の間、「米国の魂」のために戦うと約束してきた。そして20日に第46代大統領に正式就任した今、ずたずたに打ちのめされたその魂をよみがえらせるという極めて困難な任務に、いよいよ正面から向き合うことになる。

歴代の大統領で、これほど厳しい環境での船出を迎えた人物はほとんど思いつかない。新型コロナウイルスのパンデミックがなお多くの生命を奪い、人々の生活を台無しにしているだけでなく、武装蜂起の恐れがくすぶり、トランプ前大統領は6日の連邦議会議事堂占拠事件を扇動したとして、これから上院で弾劾裁判に臨む。

選挙で不正があったというトランプ氏による根拠のない主張をまだ何百万人もの有権者が信じて疑わず、議会では勢力が伯仲する与野党が何らかの歩み寄りをしない限り、物事は決まりそうにない。こんな深刻な分断が起きている状況で、バイデン氏は米国を統治していかなければならない。


そこで自分が国家を団結させ、さまざまな政策を実行できると大見得を切ったバイデン氏は、実際に結果を示すことを強く迫られている。それも素早くだ。

長らく民主党ストラテジストを務めるジョー・トリッピ氏は「バイデン氏は新型コロナウイルスワクチン配布に注力し続け、(国民全体に届けるための)『最後の1マイル問題』を解決しなければならない。失敗や他に気をそらすことは許されない」と述べた。

バイデン氏は、議会が迅速に動いてほしいと考えている。政権チームが信じているのは、単に言うだけでなくきちんと結果を出すことが、政治的緊張を和らげる一番の方法だということだ。特にバイデン氏が経済の安定や学校再開、ワクチン普及に向けた第一歩として提案した1兆9000億ドル規模の追加経済対策の可決が求められている。

あるバイデン氏の顧問は、国民は政府が機能して政策を実行してほしいと望んでおり、トランプ支持者の多くもパンデミックで傷ついたと付け加えた。別の顧問は「暗闇から脱出する道はある。だがわれわれは議会の支援が必要だ」と訴えた。

ライス大学で大統領史を研究するダグラス・ブリンクリー氏は、バイデン氏の就任時の状況について、南北戦争勃発直前で暗殺の脅威にも直面していた1861年のリンカーン大統領になぞらえた。ブリンクリー氏は「当時は暴力のにおいがぷんぷんしていた」と語り、もちろん現在はそこまで危機的ではないとも認めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEGのCEO報酬、年最大1300万ポンド強に 

ワールド

コロンビア大を告発、デモ参加者逮捕巡り親パレスチナ

ビジネス

タイ自動車生産、3月は前年比-23% ピックアップ

ビジネス

米500社、第1四半期増益率見通し上向く 好決算相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中