最新記事

スポーツ

韓国では自治体もサポート パリ五輪から正式採用でブレイクダンスに注目

2021年1月6日(水)20時10分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

自治体が世界大会を開催

ブレイクダンスがここまで人気となった背景として、韓国の自治体のサポートも忘れてはいけない。2007年からおととしまで毎年行われていたブレイクダンスの世界大会「R16Korea 」は、韓国観光公社と議政府市が主催し、韓国文化体育観光省が後援を行う政府公認的なブレイクダンス大会だった。

また富川市は、2012年より「ブレイクダンスのメッカ都市」と名乗り、ブレイクダンスイベントを開催してきた。2014年には全国大会を行い、2016年からは世界からブレイクダンスチームをゲストに招き、「BBIC」というブレイクダンス国際大会を大々的に開催している。

さらに、蔚山市では昨年10月から2年間ブレイクダンスチーム「カイクルー」を市の広報大使に任命した。今後は、市公認のイベントや、公式ユーチューブチャンネルに出演し活動していくという。

カイクルーは1999年から活動している15人組のブレイクダンスグループで、世界大会にも何度も出場している有名なチームの1つである。今回のパリ・オリンピックに選手として出場することにももちろん意欲的だという。

聴覚障がいありながらユース五輪でメダル獲得

newsweek_20210106_201023.jpg

パリ五輪出場を目指すキム・イェリ選手

ほかにもオリンピック出場に期待を寄せる選手がいる。キム・イェリ選手は聴覚障がい者でありながら、2018年ブエノスアイレス・ユース・オリンピックに出場し銅メダルを受賞したダンサーである。

キム・イェリ選手は、聴覚障がいがあることが原因で、もともといじめられっ子だったという。ところが、中学校1年生の時、学校で特技自慢大会があり在校生の前でダンスを踊ったことでいじめっ子たちからの視線が変わったそうだ。彼女は「ダンスがいじめを終わらせる突破口となった」と語っている。

耳に超小型補聴器を付けて踊っているが、ときには音が聞こえないこともあるそうで、そういうときは、相手チームが踊っているダンサーのリズムを目で見て、心の中で1.2.1.2.と音を刻み踊るのだという。聴覚障がいは、ダンサーにとってかなり不利な短所と言える。しかし、彼女はなぜそこまでしてダンスを続け、世界大会でも入賞できる強さを持っているのか。

キム・イェリ選手は、あるTVのインタビューで「女性はブレイクダンスが下手だ。聴覚障がい者には踊れない──そんな偏見に打ち勝ち、人の目を気にせずやりたい事をやるという道を私が拓きたい」と力強く語っていた。この使命感が彼女を後押ししているのかもしれない。

3年後のパリ・オリンピックでは、これまで「ブレイクダンス」を見たことなかった人も、ぜひ競技に注目して欲しい。そして、ここで紹介した韓国の選手の他に、日本や世界の素晴らしい選手たちの活躍に期待したい。

時代と共に様々なスポーツが入れ替わっている。それまであった競技が除外されることは少し寂しいが、それによって新しいスポーツに目を向けてみる良いきっかけになるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済の不確実性、減税や規制緩和も含め分析すべき=

ワールド

オデーサ港に夜間攻撃、子ども2人含む5人負傷=ウク

ワールド

アングル:イランと停戦のイスラエル、「平和の配当」

ワールド

トランプ減税・歳出法案、下院審議で難航続く 共和強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中