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福祉の現場で頻発するハラスメントの背景に、男性管理職の行き過ぎた偏り

2020年12月23日(水)16時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

偏りが大きいのは福祉産業だが、地域による違いもある。対策の音頭をとるのは地方自治体であることが多いので、都道府県別のデータを出してみた。産業中分類の「社会保険・社会福祉・介護事業」について、就業者と管理職の男性比を県別に出し、後者が前者の何倍かを計算した。<表2>は、高い順に並べたランキングだ。

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管理職の男性比は、就業者全体のそれの何倍か。都道府県別に見ると、1.93倍から5.22倍の分布幅がある。最も高いのは福井県で、全体比とくらべると5倍以上の偏りとなっている。奇遇と言うか、上位3位は北陸の県だ。

福井県では、福祉産業の就業者の男性比は17.6%だが、管理職では91.7%にもなる。これは県として、是正のアファーマティブアクションをとるべきではないか。具体策として、管理職の男性比を適正範囲に制限することが考えられる。例えば、就業者全体の男性比の0.5~2.0倍の範囲内にするというのはどうだろう。

<表1>によると、児童福祉産業の就業者の男性比は7.9%なので、この基準だと管理職の男性比は3.9%から15.8%の範囲でないといけない。しかし現実は56.9%で、明らかに常軌を逸している。福井県の福祉産業だと、管理職の男性比の適正範囲は8.8%から35.2%だが、現実は91.7%だ。県として是正のアファーマティブアクションが求められるゆえんだ。

これから重要性を増す福祉産業だが、性暴力やハラスメントがまかり通ることがあってはならない。なすべきは研修でくだくだと道徳を説くことではなく、人的配置の「ジェンダー・アンバランス」を直すことだ。

<資料:総務省『国勢調査』(2015年)の抽出詳細集計>

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