最新記事

子育て

セクハラしない人間に育てる方法

2017年12月22日(金)17時45分
メリンダ・モイヤー(サイエンスライター)

女の子っぽい遊びをする男の子への風当たりを子供は感じ取る eatcute-iStock.

<男女のステレオタイプは子供の時代に形成される――異性を尊重して平等に接する力を伸ばすために親ができることは>

セクシュアル・ハラスメントのスキャンダルが報じられるたび、私は恐怖心を募らせる。ただし、それは自分ではなく子供たちのことを考えるから。息子をどう育てれば、女性を尊重して平等に扱える男にできるだろう? どうやったら娘に自信と強い意志を育んでやれるのか?

だから私は、いつもの方法を取った。科学的事例を調べ、研究者に話を聞きまくったのだ。

子供のジェンダー観の発達において、親は期待するほどの影響力を持ち合わせていない。周囲の仲間や文化から受ける影響のほうがずっと強いからだ。それでも乳幼児の頃から両親がしっかりと手段を講じることで、性差別をしない平等主義の子供に育てることはできるという。

まず、ジェンダーやその重要性に対する理解力を、子供がどのように発達させるのかを知っておくことが大切だ。子供は周囲の人々をよく見て違いを研究することで、常に世界を観察し、推論を働かせている。「子供は世界を見ては、どちらが重要だろうといつも考えている」と、テキサス大学オースティン校のレベッカ・ビグラー教授は言う。

1歳になる頃には、ほとんどの乳児は男性と女性の顔を区別できる。だが、その性差が重要だと教え込むのは大人だ。「大人たちはいつでも『元気な男の子だね』『なんてかわいい女の子』と、ジェンダーを示す名詞を使って話す」と、ビグラーは言う。「そのせいで、子供たちは性差がとても重要なのだと受け止める」

子供がひとたびジェンダーに注意を向けると、脳内では過剰に一般化され、硬直したルールや区分けが作られる。いうなれば、大まかなステレオタイプだ。

彼らは自分が目にした例を基に、女性は料理好きで教師になり、男性はサッカー好きで消防士になるものだ、と決め付けるかもしれない。さらに歴代アメリカ大統領が全て男だと気付いたときなどに、男女の力の相違についても認識し始める。子供はそこから安易な推論を導くだろう。最高権力者がいつも男だということは、男は生まれつき女より賢くて能力があるに違いない、と。

性差は生物学的なもの?

性のステレオタイプを築き始めるにつれて、子供自身もそれに従って行動するようになる。そのほうが自分にとって都合がいいからだ。研究によれば、親(特に父親)は子供に男の子向け・女の子向け玩具を区別して与えがちだという。また親は、息子が友達やきょうだいに攻撃的な態度を取ることについて、娘の場合より概して寛大だ。教師も女の子に「女性的な」行動を推奨する傾向がある。

さらに、周囲の仲間もこの傾向を助長する。就学前の男の子の遊びを観察したある研究では、キッチンセットやドールハウスなど女の子的な玩具に興味を示している子がいると、他の男の子が割って入ってたたいたりバカにしたりする現象がみられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月貿易赤字10.9%減、予想外の縮小 20年6

ビジネス

米新規失業保険申請、4.4万件増の23.6万件 季

ビジネス

中国経済運営は積極財政維持、中央経済工作会議 国内

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 2
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 3
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中