最新記事

子育て

セクハラしない人間に育てる方法

2017年12月22日(金)17時45分
メリンダ・モイヤー(サイエンスライター)

とはいえ、「私の息子は赤ちゃんの頃からトラックに夢中。性差は文化よりも生物学的に引き起こされるのでは?」と考える人もいるかもしれない。研究者たちも、この点については答えを出せないと認めている。生まれながらの性質と育った環境とを完全に分けることなど不可能だ、というのもその理由だ。

「男女は生まれた瞬間から生物学的・社会的に異なる体験を重ねる。こうした影響が相互に作用するため、一つ一つ切り離して解読するのは困難だ」と、アリゾナ州立大学のキャロル・マーティン教授は言う。

8歳、9歳、10歳と成長していくにつれて子供の認知能力はより柔軟になる。一般的な男女のあるべき姿とは大概、社会慣習に基づいているだけなのだと、彼らは気付く。

だがそれと同時に、子供は「道徳的な理由付け」も発達させ始める。なかにはこうした性のステレオタイプについて、道徳的に正しいと捉える子も出てくる。女は慎み深く、男は積極的であるべきだ、なぜなら「それが正しいことだから」と考えるようになると、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のキャンベル・リーパーは言う。

そして、ここに重要な問題が生じる。性のステレオタイプを植え付けられた子供ほど、女は男よりも劣っている、男は生物学的に優位だから高い地位に就く、と決め付けがちになる。

厄介なことに、思春期に入るにつれ、こうしたステレオタイプは重大な方向――セックスに関する意識にも影響を与えるようになる。性のステレオタイプが強い青少年ほど、男は常にセックスを求めるものであり、女は彼らの性的関心を引くために魅力的であるべきだ、と信じ込む。さらに、ステレオタイプを信じる男の子ほど、性的な冗談を言ったり女性の体に触ったりする傾向が強いことも分かった。

女の子よりも男の子のほうが性のステレオタイプにとらわれていることをうかがわせる研究もある。背景には、男の子のほうが親からも社会からも「男の子らしくあれ」という圧力を強くかけられていることがあるかもしれない。女の子のスーパーマンごっこより、男の子のお姫様ごっこのほうが社会の許容度が低いことを子供はよく分かっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー

ビジネス

焦点:日鉄、巨額投資早期に回収か トランプ米政権の

ビジネス

香港取引所、東南アジア・中東企業の誘致目指す=CE

ワールド

米ミネソタ州議員射殺事件、容疑者なお逃走中 標的リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中