最新記事

事件

コロナ禍で世界的に詐欺事件が急増 架空請求からロマンス詐欺まで

2020年12月16日(水)10時18分

バークレイズ関係者の話では、英国で、恋人を失って悩んでいる人を狙った「ロマンス詐欺」も10月、前月に比べて46%増加した。平均で9000ポンドをだまし取られている。

ロマンス詐欺の手口はさまざまだが、大概はデートアプリに架空の魅力的なプロフィルを掲載した犯罪者が、数週間から数カ月かけて粘り強く被害者と連絡を保った後、現金か何らかの贈り物をねだるやり口だ。

ローハンプトン大学で犯罪学と法言語学を研究するエリザベス・カーター氏は、だます側も、書面に露骨に現金が欲しいと書くのでなく、もっと巧妙な手法に変わっていると述べた。

まるで軍拡競争

ただ、銀行や司法当局も反撃に動いている。

消息筋がロイターに明かしたところによると、英ナットウエスト・グループは詐欺対策拡充のため専門家を追加で採用したほか、不正なローン申請を見破る新技術を導入した。

とりわけ英国で詐欺問題が深刻だ。英会計検査院は10月、小規模企業を対象とし政府が100%保証する融資制度「バウンスバック・ローン」で、最大260億ポンドが詐欺ないし経営破綻のために永久に返済されない可能性があると試算した。

HSBC、ロイズ、メトロバンク、ナットウエスト、バークレイズなど英銀7行は9日、正当な受取人のものだと信じ込まされた口座に入金してしまう「APP詐欺」に関して、該当する被害者への補償に応じる姿勢を表明した。英財務省のデータによると、今年前半のAPP詐欺被害額は2億0780万ポンドに上った。

バークレイズUKの詐欺対策責任者ジム・ウィンターズ氏によると、頻繁に取引をフィルターにかけて不正洗い出しの機会を最大限にする一方で、普通の決済は滞らせないようにする技術やプラットフォーム構築に向け、年数百万ポンドを投じている。

「われわれは詐欺師らがかなり高度な技術を使うことを認識している。だから互角の立場を確保しなければならない。彼らは資金も潤沢だし、自分たちがやっていることの意味もよく分かっている」と述べ、「月並みな表現だが、まるで軍備拡張競争だ」と指摘した。

複数の関係者は、国際的に事業展開する銀行が当局とコミュニケーションを強化し、詐欺師に新型コロナを利用させないよう協力を緊密にしていると指摘した。

(Sinead Cruise記者、Lawrence White記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マイクロソフト7─9月売上高、クラウド好調で予想超

ビジネス

米政府閉鎖、米経済に最大140億ドルの損失=議会予

ワールド

トランプ氏、韓国の原子力潜水艦建造を承認

ワールド

アルトマン氏、1.4兆ドルの野心的AIインフラ計画
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中