最新記事

台湾海峡

中国国内に台湾版「国家安全法」を求める声

Chinese Scholar Calls for Beijing to Draft 'Taiwan National Security Law'

2020年12月14日(月)18時01分
ジョン・フェン

国安法違反で起訴された蘋果日報の創業者、黎智英。台湾の独立派もこうなるのか? Tyrone Siu-REUTERS

<「非平和的再統一」に備えよと、強硬派の法学者が主張>

中国政府は台湾向けの「国家安全維持法(国安法)」を起草し、台湾の「非平和的再統一」に向けた準備をすべきだ――台湾問題をめぐる中国国内のセミナーで上がった声だ。

発言の主は北京航空航天大学の田飛龍(ティエン・フェイロン)准教授。法学者で、今年6月30日に香港で施行された国安法を強く支持している。田は香港での教訓を台湾問題に応用する機は熟したとも述べた。

香港の中国評論通信社によれば、田は河南省信陽で開催された台湾問題に関するセミナーに招待された110人を超える学者の1人だ。

セミナーは中国政府系の団体が主催したもので、田は「一国二制度」モデルの下での香港統治で得られた知見は中国政府にとって、「台湾問題」打開に向けて非常に重要な意味を持つだろうと述べた。

香港国安法は国家への反逆や扇動、分離独立や外国勢力との共謀を禁じている。また、台湾の独立運動を抑止するような条文も含まれていると田は主張した。

中国政府は台湾国安法の起草に向けて必要な手続きを開始すべきだと田は述べた。また、台湾の「非平和的再統一」の下準備として2005年に制定された中国の反国家分裂法の改正も提案した。

台湾併合への強い意欲示す習近平

その中では、台湾の独立運動に関与した個人や団体に対する制裁も必要になるだろう。田は「極端な分離独立勢力」や「外国の干渉」を抑止するための選択肢として「正当化され厳密な」制裁の実施のための関連法の改正も挙げた。

中国政府内にはすでに、台湾の独立派指導者たちの「ブラックリスト」を作成する動きがある。詳細は不明だが、複数の報道によれば台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統らが含まれる可能性が高いという。田の発言は、こうした中国政府の動きと軌を一にしている。

習近平国家主席は、何が何でも台湾を併合しようという中国政府の姿勢を明らかにしている。香港や新疆ウイグル自治区ではある程度、国安法が順守されていると見られることから、アナリストたちは中国にとって台湾がアジア太平洋地域の支配を固めるための最後のハードルになっていると語る。

もはや台湾海峡における今後のいかなる事態の展開も中国政府の手の内にあると田は述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中